岡野八代「『トランスジェンダーを排除しているわけではない』が、排除するもの」 [現代の性(性別越境・性別移行)]
8月19日(水)
岡野八代「『トランスジェンダーを排除しているわけではない』が、排除するもの」
https://wan.or.jp/article/show/9090
先ごろ、「WAN( Women's Action Network」に掲載された石上卯乃「トランスジェンダーを排除しているわけではない」というおそらく実在しない人物(もしくは複数の人物の集合体)の「エッセー」に対する反論。
さすが岡野さん、切れ味鋭い指摘の数々に敬服。
以下、私なりの摘要。
「記事の真意は、トランス女性は、なるべく本物の女性がいるところにはいないでほしい、それどころか、そもそもトランス女性は、危険な人なのだと訴えているようにみえます。」
「ジェンダー・アイデンティティを〈単なる意識〉として軽視し、生物学的/ 解剖学的な身体のみが現実であり、そこに意味を与え、基盤そのものを作り変えていく力もあるジェンダー規範のもつ構築性を軽視する傾向が読み取れます。」
「フェミニズム理論において、多くのフェミニストたちが蓄積しながら論じてきたはずの、ジェンダー規範のなかで生まれる言説・社会的現実がいかに、わたしたちの身体や自然を作り上げてきたのかという重要な議論が、ここでは否定されてしまっています。」
「ジェンダーによる男女の振り分けが厳しい現実に曝され、女性として認められないのではないかと悩んできた人にとって、プライヴェートな空間から排除されることが、彼女たちの尊厳をどれほど傷つけることになろうかと危惧せざるを得ません。」
「差別発言が差別的であるゆえんは、そこで発せられる言葉が示す共同体のなかに、差別されている者たちが(対等な人として)存在していないということを表明する点にあります。」
「石上さんの記事、とりわけそのタイトルの「排除しているわけではない」は、そもそも、自分が生きている社会から排除されてきた/ いる者たちにとって、彼女たち・かれらの抱えている現実を認めない、という宣言に他なりません。」
「この社会が、民族差別、人種差別、女性差別、性差別、その他さまざまな差別によって、多くのマイノリティを生み、排除し、差別し、しかも暴力に対して鈍感であることを前提に、たとえ迂遠に思えても、その差別の構造を一つひとつ変革していくことから、わたしたちは始めるしかないのではないでしょうか。」
「近年の女子大学の取り組みはそのひとつであり、公文書における性別記載蘭の見直しや、とりわけ、トランス・ジェンダー差別・排除に抗議する運動をされている人々の動きは重要であることは言うまでもありません。」
「少なくとも、トイレや更衣室、浴場が問題の本質ではなく、差別や排除にいま直面しているひとたち、あるいは性暴力の被害に苦しむひとたちと共に、この構造と闘う態勢を整えることに力を傾けることが、いま必要なのではないでしょうか。」
岡野八代「『トランスジェンダーを排除しているわけではない』が、排除するもの」
https://wan.or.jp/article/show/9090
先ごろ、「WAN( Women's Action Network」に掲載された石上卯乃「トランスジェンダーを排除しているわけではない」というおそらく実在しない人物(もしくは複数の人物の集合体)の「エッセー」に対する反論。
さすが岡野さん、切れ味鋭い指摘の数々に敬服。
以下、私なりの摘要。
「記事の真意は、トランス女性は、なるべく本物の女性がいるところにはいないでほしい、それどころか、そもそもトランス女性は、危険な人なのだと訴えているようにみえます。」
「ジェンダー・アイデンティティを〈単なる意識〉として軽視し、生物学的/ 解剖学的な身体のみが現実であり、そこに意味を与え、基盤そのものを作り変えていく力もあるジェンダー規範のもつ構築性を軽視する傾向が読み取れます。」
「フェミニズム理論において、多くのフェミニストたちが蓄積しながら論じてきたはずの、ジェンダー規範のなかで生まれる言説・社会的現実がいかに、わたしたちの身体や自然を作り上げてきたのかという重要な議論が、ここでは否定されてしまっています。」
「ジェンダーによる男女の振り分けが厳しい現実に曝され、女性として認められないのではないかと悩んできた人にとって、プライヴェートな空間から排除されることが、彼女たちの尊厳をどれほど傷つけることになろうかと危惧せざるを得ません。」
「差別発言が差別的であるゆえんは、そこで発せられる言葉が示す共同体のなかに、差別されている者たちが(対等な人として)存在していないということを表明する点にあります。」
「石上さんの記事、とりわけそのタイトルの「排除しているわけではない」は、そもそも、自分が生きている社会から排除されてきた/ いる者たちにとって、彼女たち・かれらの抱えている現実を認めない、という宣言に他なりません。」
「この社会が、民族差別、人種差別、女性差別、性差別、その他さまざまな差別によって、多くのマイノリティを生み、排除し、差別し、しかも暴力に対して鈍感であることを前提に、たとえ迂遠に思えても、その差別の構造を一つひとつ変革していくことから、わたしたちは始めるしかないのではないでしょうか。」
「近年の女子大学の取り組みはそのひとつであり、公文書における性別記載蘭の見直しや、とりわけ、トランス・ジェンダー差別・排除に抗議する運動をされている人々の動きは重要であることは言うまでもありません。」
「少なくとも、トイレや更衣室、浴場が問題の本質ではなく、差別や排除にいま直面しているひとたち、あるいは性暴力の被害に苦しむひとたちと共に、この構造と闘う態勢を整えることに力を傾けることが、いま必要なのではないでしょうか。」
2020-08-20 01:13
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