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トランスジェンダーの役はトランスジェンダーに演じさせるべきか? [現代の性(性別越境・性別移行)]

7月12日(日)

トランスジェンダーの演劇者(役者さん)に、その実力にふさわしい機会が与えられるべき、というのは当然だと思う。

しかし、トランスジェンダーの役はトランスジェンダーに演じさせるべきだ、という意見には、まったく同意できない。

演劇(役を演じる)というものは、そういうものではない。
自分と違う役を演じるからこそ、面白いのだ。
泥棒が泥棒の役をやっても、そのままで、なんの捻りもなく面白くない。
誰にどんな役を演じさせるかが配役・演出の見せ所であり、演劇の醍醐味だと思う。

そうしたおかしな当事者主義を敷衍すると、男性の役は男性しか、女性の役は女性にしか演じられないことになり、日本の伝統演劇に大きな役割をはたしてきた「女形」や、宝塚歌劇の「男役」が成り立たなくなり、異性装という要素を大切にしてきた日本の演劇自体が成り立たなくなってしまう。

ゲイがゲイの役しか、レズビアンがレズビアンの役しか、トランスジェンダーがトランスジェンダーの役しか、演じることができなかったら、LGBTの演技者の活躍の場を大きく制約し、才能を潰すことになりかねない。

【追記】
例によって、偏った受け取り方をする人がいるようだが、私はずっと、トランスジェンダーの役をトランスジェンダーが演じる時代になることを願ってきた。

だから、Trans-womanの主人公をTrans-womanのDaniela Vegaが演じた「Una mujer fantástica、邦題:ナチュラルウーマン」(チリ、2017年)を見たときは素晴らしいことだと思ったし、NHKドラマ「女子的生活」(2018年)で西原さつきさんがTrans-womanの役を演じたときは、「やっと日本もここまで来た」と、とてもうれしかった。

一方で、「ボーイズ・ドント・クライ」(アメリカ、1999年)でTrans-man役を演じてアカデミー主演女優賞に輝いたヒラリー・スワンクの演技はすばらしかった(3回も観た)。

また「女子的生活」の志尊淳さんの演技は、西原さつきさんの演技指導もあり、秀逸だったと思う。

だから「トランスジェンダーの役はトランスジェンダーが演じるべきだ」という主張には、私は同意できない。

演劇の配役に、身体的性別、性的指向、gender identity(SOGIE)による、いかなる制約を設けるべきではない。
それをやったら、演劇が死んでしまう。

日本では、すでに1960年代にカルーセル麻紀さんが、ちょっと妖しい女性の役で映画やテレビに出演していたし、1960年代末、丸山明宏先生(現:美輪)演じる「毛皮のマリー」や「黒蜥蜴」の主人公の妖艶さは、社会的に大きな評価を受けていた。

美輪先生は、2005年にNHK大河ドラマ「義経」で鬼一法眼(鞍馬寺の遮那王=源義経の剣術の師匠)役で出演していたり、2014年にはるな愛ちゃんが、一流男優(菅原文太さん)と一流企業(すずき)のCMで父娘役を演じていた。

いまだにトランスジェンダーの演劇者を認めようとしないアメリカみたいな後進国とは、歴史がぜんぜん違うのだ。

「頭がアメリカン」の人たちは、そこらへんの違いが解っていないから、すぐにアメリカ標準で考えてしまう。

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