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千田「論文」の「枠組み」批判 [現代の性(性別越境・性別移行)]

2月25日(火)

千田教授の「論文」が「TERF」の枠組みに完全に乗ってしまっている点。

①トランスジェンダーの社会的包摂の議論をトイレ・お風呂問題に誘導・集約している点。
トランスジェンダーの多くは、現状の「線引き」を変えることは主張していないし、現実に問題は(ほとんど)起こっていないにもかかわらず。

②セルフID論の焦点化。
「女性であると主張すれば女性として社会的に扱うべきだ」などという非現実的な主張は、現実の社会を生きているトランスジェンダーはほとんど誰もしない。
「ジェンダーアイデンティティは重要だが万能ではない」のだ。

トランスジェンダーの多くが主張していないことを、あたかも主張しているかのようにでっち上げるのが「TERF」の得意とする「藁人形論法」であり、千田「論文」はその枠組みに、かなりの部分乗ってしまっている。

千田「論文」の多くの読者が、「千田教授はターフ寄りである」「ターフ擁護の論文だ」と読んだのは(千田教授によれば「誤読」だそうだが)、そうした枠組みの問題性、姿勢(学問的中立性)の偏りを真っ先に強く感じたからだと思う。

細かな論旨にもいろいろ疑問はあるが、根本的には枠組みの問題だと思う。
そういう意味では、「こいつはターフではないか?」という先入観をもって読まれてしまった場合が多かったのは、ある意味、不幸だったと思う。
ただ、それはご本人の問題設定が招いたものだ。

もう一点、枠組みの問題を指摘しておこう。

③ 問題化の経緯が飛んでいる。
そもそも、トランスジェンダー排除の議論は、2018年7月のお茶の水女子大学のトランスジェンダー学生受け入れ声明に始まっている。
その後、9月頃からTwitter上での反対意見が強まり、その際、受け入れ反対派が焦点化したのが「トイレや風呂はどうする?」だった。
それがいったん沈静化したのち、2019年初から再び燃え上がる。
批判の背後にTERFの存在があることが意識されたのもこの頃だ。
そして、「ペニスをぶら下げたトランスジェンダーが(今すぐに)女性トイレや女風呂に侵入してくる」というTERFの煽りに恐怖や不安を書きたてられた女性たちが出現する。
そうした女性たちの中には、素朴な恐怖をいだいただけの自分が「ターフ」呼ばわりされることに反発する女性も出てくる。

千田教授は、今述べたようなそれ以前の経緯については、あまり関心がないようで(調査もしていない?)、「論文」に簡単な要約があるだけだ。
また、この間の推移を丁寧に追っている『女たちの21世紀』98号掲載の堀あきこさんの論考を、なぜかまったく無視している。

それまでの経緯を軽視して、途中から書き始めた結果、トランスジェンダーとその支持者が素朴な恐怖感を抱いているだけの女性たちを「ターフ」として差別し始めたかのような問題設定になっている。
これは、まず誰が差別的言論を始めたのか?を無化し、つまり被差別の当事者を差別者であるかのように巧みにすり替える、ずいぶんひどい論法だと思う。
これまでの経緯を知っている人たちが、驚き、憤るのは無理もないと思う。
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コメント 1

みれい

‘トランス女性を排除する人’は‘女性を排除する人’と根は変わらないので、
そういう人が“女性の社会進出”を唱えたとしても、
自分(たち)の利益を確保しようとしているように聞こえ、自分(たち)さえ良ければいいというエゴも感じてしまうのですが。
by みれい (2020-03-05 22:57) 

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