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「全国遊廓一覧」の(1929年)の分析 [性社会史研究(遊廓・赤線・街娼)]

9月24日(火)

いろいろな角度から「全国遊廓一覧」の(1929年)の分析。
以下、わかったことの摘要。

(1)九州の遊廓について
遊廓(貸座敷許可地域)の数の域内格差が極めて大きい。
最も多いのは、長崎県で23箇所、273軒、2248人。
長崎市、軍港があった佐世保市だけでなく、ほんとうに浦々にある感じ。
さらには対馬、五島の離島にも。

それに対して、鹿児島県、沖縄県は1箇所だけ。
ただし、沖縄県(那覇・辻遊廓)は、貸座敷の軒数も娼妓の人数も九州最大(516軒、1032人)。
1つの遊廓で、それに次ぐのは、熊本市の二本木遊廓(64軒、763人)、福岡市の新柳町遊廓(47軒、636人)、佐世保(早岐村)の田子の浦遊廓(60軒、590人)の順。

大分県、宮崎県の貧弱さも目立つ。
大分県は、別府浜脇遊廓(41軒 114人)が目立つが、宮崎県は全県合わせて6箇所、22軒、152人。
遊廓で行われる買売春は経済行為でもあるので、経済力の表れだと思う。

(2)道府県別の遊廓数の集計
1位は面積が広い北海道の51箇所。
2位は三重県の33箇所、3位は福島県と山口県の27箇所。
三重県、福島県のベスト3はちょっと意外。
以下、山形県(25)、長崎県(23)、栃木県(22)、静岡県(20)、新潟県(19)、岩手県(18)と続く。
大都市圏は、20位大阪府(10)、24位東京府(9)、34位愛知県(4)といずれも中位から下位。
集約度が高い
散在性が強い東北が10位以内に3県入っていることからわかるように、散在性、集約度の地域差がかなり大きい。

少ないのは、廃娼県の群馬県の0、鹿児島県、沖縄県の1、山梨県、鳥取県、徳島県、埼玉県(準廃娼県)の2、和歌山県、島根県、愛媛県の3。

(3)道府県別の娼妓の数(人口比ランク)
道府県別に、娼妓の数を算出し、それを当時の人口(1920年)で割って、人口比を算出しランク付け。
計算が面倒で、ほぼ半日を費やす。
でも、得られた結果で苦労が報われた。

AAランク(人口1万人あたり娼妓20人以上)
大阪府(28.6人)、京都府(25.1人)
関西の2つの都市圏がダントツで1、2位。
関西人が買春行動が強いというだけでなく、経済活動の高さが反映していると思う。

Aランク(人口1万人あたり娼妓10~20人)
神奈川県、長崎県、沖縄県、山口県、三重県、東京府、広島県。
横浜、長崎といった港湾都市を抱える県が上位に入る。
東京府はやっと8位(15.7人)で、大阪府の55%くらいに過ぎない。

逆に少ない方は。
Dランク(人口1万人あたり娼妓2~4人)
岩手県、山梨県、鳥取県、秋田県、鹿児島県、大分県、徳島県、宮崎県。
Eランク(人口1万人あたり娼妓2人以下)
千葉県、和歌山県、茨城県、愛媛県、島根県(1.0人)。

トップの大阪府と最下位(廃娼県・準廃娼県を除く)の島根県との間には、30倍近い、きわめて大きな格差がある。
格差があることはわかっていたが、これほどまでとは思わなかった。
かなり驚き。

D、Eランクに並ぶのは、おおむね、経済活動が低調な県が多いように思うが、どうもそれだけではない。
たとえば、廃娼県である群馬県、準廃娼県である埼玉県と千葉県、茨城県を合わせると、関東地方北部~東部に遊廓、娼妓が少ないことがはっきり見て取れる。
茨城県が 43位、1.7人であるのに対し、隣接する栃木県は19位、7.5人で4.5倍の大差がある。
こうした現象は経済力だけでは説明できない。
やはり、思想性、具体的には廃娼運動の影響があると思う。

さらに言えば、Eランクに位置する茨城県と和歌山県は県都である水戸市、和歌山市に遊廓がない。
これは、経済性では説明がつかず、明らかに思想性(思想による制約)の問題だろう。
水戸市、和歌山市は旧幕時代徳川御三家の城下町だが、儒教思想の影響だろうか。
(御三家、もう1つの愛知県は10位、9.7人で、名古屋市には、全国4位の旭遊廓、171軒、1497人がある)

全体的な結露として、昭和初期においても、遊廓(買売春行動)に関する地域差はかなり大きいということ。
全国どこでも、それなりの街にはそれなりの遊廓があり、それなりの数の娼妓がいた状態にはなっていないということ。
そうした地域差には。経済力だけでなく思想性(儒教思想の影響、廃娼運動など)も絡むこと。
よって、もっと精緻な分析が必要ということ。

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