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シリーズ「薩摩(鹿児島)と男色」(その1)寺門静軒『江戸繁昌記』 [性社会史研究(性別越境・同性愛)]

8月29日(木)

シリーズ「薩摩(鹿児島)と男色」(その1)

(1)寺門静軒(てらかどせいけん)
 『江戸繁昌記』第二篇(1834年=天保5年刊)神明の章

江戸における陰間茶屋の三大集中地の1つ「芝神明前」の記述に、陰間の客として薩摩藩の勤番武士が出てくる。
芝と薩摩藩邸があった高輪は程近く、男色好きの薩摩武士は常客だったが、田舎者で上客ではなかった。

藩主に従って帰国する勤番武士が馴染みの陰間に語り掛ける。
「このたびかねての約束を破らざるを得なくなった。引き続いて義兄弟でいることができない。帰国しなければならないのだ。短くてもよいから手紙をくれ。たとえ国元にビイドロを逆さにしたような首筋がほっそりして透き通るように色が白い美しい女がいたとしても、決してお前の美貌と見替えるようなことはしない。来年、任務が交代すれば、きっと戻ってくる。その時は薩摩上布を土産に包んでこようか、それとも墨と筆がいいか、名高い国分の煙草か、茶か、国の産物はいろいろある。お前が欲しいものを持参しよう。」

それに対して、陰間は、心中冷笑しながら、
「ふん、声も悪いし言ってることも煩わしい。そんなこと聞きたくもないわ。今のことで手いっぱいで、来年ことなんて知ったこっちゃない。欲しいのはお金だけよ」

薩摩武士の誠意も、すれっからしの江戸の陰間からしたら野暮の骨頂で、ちょっとかわいそうなくらい、相手にされていない。

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