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タトゥー客拒否は「不適切」 政府通知に悩む温泉業界 [生活文化・食文化・ファッション文化論]

8月8日(木)

タトゥーがある人を、法的根拠がないにもかかわらず、拒絶・排除するのは明らかな差別。
温泉施設業界は、早急に姿勢を改めるべき。

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タトゥー客拒否は「不適切」 政府通知に悩む温泉業界

公衆浴場や温泉旅館で、入れ墨(タトゥー)を容認する動きが出ている。2020年の東京五輪・パラリンピックを控え、政府は入れ墨だけを理由に利用を拒むのは「不適切」との方針を打ち出した。ただ、反社会的なイメージが根強く対応に悩む施設もあり、どこまで広がるかは未知数だ。

吾妻連峰に囲まれた福島市の土湯(つちゆ)温泉。ホテル「山水荘」は昨夏、これまで断っていた入れ墨がある客に対し、館内に5カ所ある大浴場の利用を認めた。年々増え続ける外国人観光客に来てもらうためだ。

藤原誠主任は「海外からの旅行客の増加が見込まれる中、タトゥーを排除しても経営が苦しくなるだけ」と開放に踏みきった理由を語る。今のところ他の客からの苦情はなく、今後は「入れ墨可」と掲示することも考えている。容認する以上、入れ墨の種類によって区別することはしない。

観光庁は16年3月、入れ墨がある外国人観光客への対応を一般社団法人「日本温泉協会」などに通知した。文書で「入れ墨をしていることのみをもって、入浴を拒否することは適切ではない」と明言。シールで覆う▽入浴時間を分ける▽貸し切り風呂を案内する――といった対応事例を紹介した。安倍政権も17年2月、入れ墨だけを理由に拒むことは難しいとの答弁書を閣議決定した。

そもそも、入れ墨は何を根拠に排除されてきたのか。公衆浴場法には伝染病患者などに関してはあるが、入れ墨についての規定はなく、日本温泉協会の担当者は「法的根拠は弱い。施設ごとの判断が慣習として定着してきた」と説明する。このため、公営の温泉施設では入れ墨を理由とした入浴拒否をしてこなかった経緯がある。大分県別府市では、入浴できる市営温泉などを紹介する外国人向けの冊子を改めて作り、周知に努めている。

客に判断委ねる名湯

別府では1日平均1万2千人が宿泊。外国人観光客が3割で、10月にはラグビーワールドカップ(W杯)の試合も控える。その前にさらに一歩を踏み出すか、民間施設も検討を始めた。

別府市旅館ホテル組合連合会ではW杯期間中、入れ墨がある客の入浴を認められないか協議している。利用者にアンケート中で、賛成が多ければ解禁に踏み切る。その場合、外国人も日本人も区別しない。堀精治事務局長は「組合員から『外国人だけ認めるのは逆に差別だ』という意見が出た」と明かす。

ただ、市内の温泉ホテルの経営者は「みんなを入れたい気持ちもあるが、日本では入れ墨が反社会勢力とつながるイメージはまだ強く、嫌がる人もいる」と悩む。年間数件は「入れ墨の人が入っていて怖かった」との苦情も寄せられる。このホテルでは、大浴場の入り口に「入れ墨での入浴はお断り」と掲示している。

同じくラグビーW杯の試合がある静岡県。熱海温泉ホテル旅館協同組合(熱海市)は政府の考えに理解を示すものの、入れ墨入浴拒否の方針を維持する構えだ。梅原和寛・前専務理事は「個別に『外国人のタトゥーは仕方ないよね』という声は出ているが、全体としての動きにはなっていない」と話す。外国人観光客の割合がそれほど高くないことも一因という。

有馬温泉観光協会(神戸市)は、外国人からタトゥーについての問い合わせを受けると、大浴場の利用は断り、家族風呂や市営の温泉施設を案内している。「特に問題は起きておらず、方針を変える予定はない」との立場だ。(宮野拓也)
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タトゥーに詳しい山本芳美・都留文科大教授(文化人類学)の話
欧米では数人に1人がタトゥーを入れているという調査結果もある。異文化を受け入れる政府の考えには同意するが、政府は現場に丸投げせず、施設の声を聴いた上で、具体的な対策を取ることも欠かせない。反社会勢力と関係ないことが明らかなタトゥーでも、施設にクレームを言う人もいる。今後、日本社会が多くの観光客や労働者らを海外から受け入れるのであれば、より寛容になる覚悟が必要ではないか。

『朝日新聞』2019年8月7日18時30分
https://digital.asahi.com/articles/ASM8452BXM84TIPE00F.html?rm=739







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