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イギリスの経済誌『The Economist』の取材を受ける [お仕事(出演・取材協力)]

3月12日(火)

イギリスの経済誌『The Economist』の取材を受ける。
以下、質問に答えたことの要約。

(1)日本のトランスジェンダーの歴史について
① 西欧社会と異なり、トランスジェンダー芸能・飲食接客業・セックスワークの長い歴史がある。
② 1990年代は、トランスジェンダー・カルチャーがけっこう活発だった。
③ 2000年代になると、性別移行の病理化(「性同一性障害」概念の流布)が急速に進行し、医療福祉の観点が強まった。
④ 2010年代に入って、ようやくトランスジェンダーの人権という観点が徐々に浸透しつつあるのが現在。

(2)日本社会におけるトランスジェンダーの現状について
① 日常生活レベルでは、取り立てて差別は感じない。
買い物も飲食も、一般の店でできる。
それは、東京・新宿のような大都市圏だけでなく、少なくとも旅人(来訪者)としてなら地方においても同様(住むとなると違うかもしれないが)。
② 一方、行政システムや企業への就労という面では理解が不十分で、差別的な扱いがある。とりわけ就労差別は深刻で、改善が必要。
③ つまり、日本社会のトランスジェンダーへの扱いは、二重構造的である。

(3)性別移行法における手術要件について
① 日本で2003年に厳格な手術要件を備えた性別移行法が成立した翌年の2004年に手術を必須としないイギリスの性別移行法が成立した。
その結果、日本は、手術要件を定めた古いタイプの性別移行法をもつ最後の国(ラストランナー)になった。
② その後、スウェーデン、オランダ、ドイツなど古いタイプの性別移行法をもつ国は続々と手術要件を削除した。
対応しなかったのは、トルコと日本くらいだと思う。
その結果、周回遅れのラストランナーになってしまった。

(4)なぜ日本ではトランスジェンダーに対する「強制不妊手術(involuntary sterilization surgeries)」が続いているのか?
① 日本政府、医学界の人権意識が鈍いこと。
② 手術を受ける多くの人たちが、法律(手術要件)による手術への誘導を「構造的な強制」と認識していないこと。
③ 性別移行の病理化を支持し、人権よりも医療福祉を優先する考えの当事者団体が、今なお、影響力を持っていること。
④ しかし、遠くない将来には、手術要件を削除した、国際的な人権レベルに沿った「新・性別移行法」を制定すべきと考える。

インタビュー終了後、日本支局編集長(女性)に、取材の意図を尋ねてみた。

やはり、日本のトランスジェンダーは人権が抑圧された状態にある、その最たるものが、性別変更にあたって「強制不妊手術(involuntary sterilization surgeries)」が要件化されていることだ、という認識のようだった。

法制上はともかく実態的には、日本のトランスジェンダーは(欧米に比べて)そんなにひどく抑圧された状態ではない、ということを伝えたつもりだが、うまく伝わったか不安。

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