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扇屋亜夫『そどみあ挽歌』ー1950年代男性同性愛関係書籍の紹介(1)ー [性社会史研究(性別越境・同性愛)]

9月19日(月・祝)

【書誌】扇屋亜夫(おうぎや あふ)著『そどみあ挽歌』
  発行所:新鋭社(東京都渋谷区円山町20番地) 
  発行年月:1958年7月
  定価:260円
  体裁:四六判(B6版)295頁 箱入り
  序文:太田典礼・比企雄三・原比露志望・角達也・橋爪檳榔子・長崎謙二郎
  跋文:武野藤介
  内容:17篇の短編小説を収録した小説集

扇屋亜夫『そどみあ挽歌』1.jpg 扇屋亜夫『そどみあ挽歌』2.JPG
↑(左)外箱 (右)内扉
扇屋亜夫『そどみあ挽歌』3.JPG
↑ 奥付

【著者】
著者の扇屋亜夫は、太田典礼編著『第3の性―性は崩壊するのかー』(妙義出版、1957年)に執筆していて、その経歴が記されている。
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扇屋亜夫 1903年生 中大卒 編集生活を転々、かたわ文学を志す。風俗科学を中心にして風俗科学研究会、略称「FKK」を起す。
住所 東京都千代田区神田小川町3の9
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ここに見える『風俗科学』は1953年に創刊された月刊の性風俗雑誌で、とくに同性愛研究に力をいれていた(1955年3月、19冊で終刊?)。
「風俗科学研究会(FKK)」は、『風俗科学』編集長西條道夫が発起し、同誌で会員を募集していた、隠れ蓑(カモフラージュ)として「花卉(かき)研究会」とも名乗った男性同性愛者の親睦サークルで、扇屋はその実質的な主宰者だった。
「花卉研究会」は会員誌として、扇屋が編集する『羅信』を発行していた。
羅信 (2).jpg
現在確認できるのは17号と19号のみで、ガリ版刷、A5版、64頁。
刊記がなく、詳細な年代は不明だが1950年代後半の発行と思われる。
(ちなみに、三橋のブログのコメント欄に、みそかごとさんから「『羅信』=魔羅通信の略ではないか」とのご教示をいただいた。その可能性が高いように思う)

詩人の高橋睦郎(1937~)は、『友達の作り方』(マガジンハウス、1993年)の中に「扇屋亜夫」の項目を立て思い出を記している。
それによると、、158年春休み(20歳)に福岡から上京し、「雑誌記者」の扇屋亜夫に会い、何度も飲食を共にしたことをこと、1962年3月(24歳)で福岡学芸大学を卒業して上京した後も「(扇屋の)勤め先の週刊誌の誌面広告の仕事をよく貰った」こと、その後、扇屋は「勤め先をやめてときどきの記事原稿が収入」の状態になり、程なく逝去したらしい。
これから考えると、扇屋の没年は1960年代後半と思われる。

なお、扇屋の名前(筆名)「亜夫」を「あふ」(もしくは「あぶ」)と読むことについては「アブノーマル」から採ったとする高橋睦郎の説が有力である。

【初出雑誌】
『そどみあ挽歌』に収録された小説の初出を調べると、17篇中12篇が『風俗科学』(第三文庫)に掲載されている。
1953~1955年頃に執筆されたと推測される。

紅いベレエ  『風俗科学』1954年6月号
雁来紅の家  『風俗科学』1954年12月号
薔薇盗人   『風俗科学』1954年8月号
素朴な活火山 『風俗科学』1954年5月号
そどみあ無頼
ひと夜の情熱 『風俗科学』1954年11月号
絶望への前夜
肉体への反逆 『風俗科学』1954年1月号
白い情欲   『風俗科学』1954年4月号 (原題)「白い色の情慾」
そどみあ遍路 『風俗科学』1953年12月号 (原題)「男色遍路」
白い血の猟人
そどみあ挽歌 『風俗科学』1954年7月号 (原題)「そどみあは行く」
磐梯のホルムス 『風俗科学』1954年9月号
港の見える丘 『風俗科学』1955年1月号
氷雨の夜
バアのひととき
外道      『風俗科学』1954年10月号 (原題)「彷徨える出発」


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コメント 4

しのっちゃ

先日は私の感情的なコメントに丁寧にお答え頂き有難うございました。
さて扇屋亜夫氏の事ですが(もし既読だったら申し訳ありません)、詩人の高橋睦郎さんの著書『友達の作り方』(マガジンハウス・1992)にその人物像が載ってあります。高橋氏が『そどみや挽歌』のファンレターを送った事から扇屋氏との付き合いが始まった事、扇屋氏が雑誌記者だった事等その人となりが記されています。ご研究の参考になれば幸いです。
ブログ、いつも楽しく(でいいのかしら)拝見させていただいて
います。くれぐれもお体にはお気をつけ下さい。
by しのっちゃ (2016-09-20 11:49) 

三橋順子

しのっちゃさん、いらっしゃいま~せ。

貴重な情報ありがとうございます。
早速、本を探してみます。
by 三橋順子 (2016-09-20 21:59) 

しのっちゃ

おはようございます、高橋氏の本ですが、差支えなければ
該当ページをコピーしてお送り致します。
長雨が続きます、くれぐれもお体にはお気をつけ下さい。
by しのっちゃ (2016-09-22 08:44) 

三橋順子

しのっちゃ さん、いらっしゃいま~せ。

お心遣いありがとうございます。
早速入手したので、大丈夫です。
近日中に、扇屋亜夫の略歴を追記しようと思っています。
by 三橋順子 (2016-10-01 10:19) 

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