3月21日(土・祝)「GID学会第17回研究大会」(大阪府立大学)初日(その1) [現代の性(性別越境・性別移行)]
3月21日(土・祝) 晴ときどき曇り 大阪 19.0度 湿度36%(15時)
5時半、起床(ホテル・ヴィアイン心斎橋長堀通)。
外はまだ真っ暗。
朝食は、コンビニで買ったパンとコーヒー。
化粧と身支度。
濃紫に明るい紫、灰紫、灰緑で片矢羽を織り出した足利銘仙(きものACT)。
若草色にカタバミ紋を染め抜いた半襟を付けた黒地に唐草模様の長襦袢(紫織庵)。
錆朱・黒・樺色の横縞の帯を角出しに結ぶ。
帯揚は辛子色(ゑり正)、帯絞は草色(福福堂)。
焼桐の台に濃紺の麻の葉柄の鼻緒をすげた右近下駄(浅草花川戸・長谷川)。
焦げ茶色のトートバッグ。
黒のカシミアのショール。
7時過ぎ、ホテルを出る。
地下道を歩いて地下鉄御堂筋線の心斎橋駅へ。
ちょうど「なかもず」行きがホームにいたので乗る。
20分ほどで終点のなかもず駅に到着。
駅から大阪府立大学へは、歩くと遠い、タクシーだと近い、微妙な距離。
普段なら歩くのだが、道筋に不安。
いきなり迷うのも嫌なのでタクシーに乗る。
あっという間に到着(基本料金680円)。
白鷺門から大学構内に入る。
かなり広い。
不思議な石のモニュメントが立っている。
キャンパス・マップによると、会場はかなり奥。
実は、私、6年ほど前(2009年7月)に、この大学の女性学センターの女性学連続講座「ジェンダーを装う」に呼んでいただき講演をしている。
「トランスジェンダー(性別越境)観の変容 -近世から近代へ-」とういう題で、後に岩波講座 『日本の思想 第5巻 身と心』(2013年)に執筆した「性と愛のはざま-近代的ジェンダー・セクシュアリティ観を疑う-」の原型になった講演で、自分としてはかなり重要な講演だったのだが、なかもず駅にも大学にも、既視感がまったくない。
あの時、どうやって大学まで行ったのか、完全に記憶が欠落している。
「かなり記憶力は良い方だと思うけど、不思議だなぁ。いよいよ呆けてきたのかなぁ」と思いながらトコトコ歩くうちに、どうやら目的に建物に着いた。
なんの案内も出ていないので「ここでいいのだろうか?」と思いながら接近していくと、建物の中から魔女のような黒い服装の女性が現れる。
おおっ!今回の大会長の東優子教授ではないか。
「おはようございます、今回はお世話になります」と挨拶すると、「研修会はあっちの建物よ」と案内してくれる。
なんで、一番偉い人が、道案内してるんだろう?
ということで、8時20分「第1回GID研修会」の会場に到着。
講師の針間克己先生や鶴田幸恵さんにご挨拶。
開会までの間、針間先生と情報交換。
8時30分「第1回GID研修会」開会。
座長は、松本洋輔先生と(岡山大学病院 精神科神経科)と康純先生(大阪医科大学附属病院 精神神経科)。
1. 鶴田幸恵(千葉大学文学部)「脱病理化と脱医療化――日常生活との関連で」
社会学の立場から概念をベーシックに解説。
「病理化(Pathologization)」多くの人間の違いを病理に組み替えること。
(例)肥満(→メタボリック・シンドローム)、喫煙
「医療化(Medicalization)」医療の対象にすること。病理化されたものを医学が囲い込むこと。
「脱病理化(Depathologization)」病理とされたものが、そこから解き放たれること。
(例)同性愛(罪→疾患→ライフスタイル)
「脱医療化(Demedicalization)」医療の対象であったものが医療の対象でなくなること(ライフスタイル化する)。
脱病理化することと、医療的ケアを受けることは別のこと。
ライフスタイルに合わせて医療を選択する(ニーズに合わせたケア)。
医療社会学的な定義と、欧米のトランスジェンダー運動家が使う概念に微妙なズレがあることなど、勉強になった。
2. 針間克己(はりまメンタルクリニック)「精神科における性別違和の診療」
性別違和診療の現場のお話。
とりわけ、「自分史」をめぐるいくつかのトンデモ事例はとても面白く、今回のGID学会ではいちばん笑ってしまったが、「ブログに書かないでください」と念押しされたので書けない。
精神科医は、「自分史」の細かな内容や真偽よりも、「自分史」の作成という作業を通して、思考パターン、コミュニケーション力、社会適応パターンを見ているとのこと。
なるほど・・・と思う。
3. 内島 豊(赤心クリニック)「ホルモン治療の基礎と臨床」
女性の閉経期に相当する高齢MtFの女性ホルモン投与量を「減らすべきか?」という質問に対して、「中高年男性の男性ホルモンの量は個人差があり、(それに対抗する)女性ホルモンを(一律に)減らすことは必要ない」という回答。
まあ、美容的見地からすると、女性ホルモン投与を続けた方るメリットはあるが、だからといって、若いMtFと同じ量を60~70代になっても投与し続けるというのは、身体への負荷としていかがなものか?と素人的には思うが、専門家の見解は違うようだ。
4. 百澤 明(山梨大学医学部附属病院 形成外科)「形成外科におけるGIDの外科治療」
SRS(Sex Reassignment Surgery=性別適合手術)だけでなくFFS(Facial Feminization Surgery=顔面整容的女性化手術)の症例報告があった。
以前から、日本のGID医療の中でFFSが軽視され、当事者の関心も薄いことに疑問を抱き、MtFの性別移行におけるFFSの有効性を主張してきた私にとっては、とてもうれしいお話だった。
10時40分、閉会。
この研修会は「身体的治療の保険適応」の基礎になる「専門医(認定医)取得の必須条件となる専門医(認定医)研修を想定して企画」された「臨床系の先生方」向けのもの。
一昨日(19日)に発表されたプログラムが興味深かったので、企画者の先生に「聴きに行っていいですか?」と打診したら「GID学会の会員ならOKです」というお返事だったので、早起きして参加した。
早朝から、興味深いお話をいろいろ聞けて、早起きした甲斐が有った。
10時45分、メイン会場に移動。
10時50分、「GID(性同一性障害)学会第17回研究大会・トランスジェンダーの健康と権利」開会(まだ、始まっていなかったんだ)。
大会長の東優子大阪府立大学教授によるオープニング・セレモニー。
それにしても、GID学会の大会テーマに「トランスジェンダー」の文字があることに、長年「悪の思想」として弾圧されてきたトランスジェンダリズム派としてはもう大感激。
↑ あれ?私が出てきた(黄色い服の人)・・・。
この写真は、1997年7月19日に開催された日本最初の性同一性障害についての公開シンポジウム「性同一性障害の過去・現在・未来」(東京神田:学士会館、主催:TSとTGを支える人々の会)の時のもの。
東優子さん(右から2人目)と私(右端)のダブル司会。
当時、東さんはハワイ大学帰りの新進気鋭のセクソロジー研究者だった。
続いて、高垣雅緒先生(藍野大学短期大学部教授)の基調講演「 トランスジェダー の脱病理化と人権 の脱病理化と人権」。
高垣先生は、脳腫瘍などを専門とされる脳外科医であり、医療人類学を研究されている方。
今回の講演は、前半は脳科学の見地から「トランスジェンダーの病態」を考察し「脱精神疾患化」が正当なものであることを主張。
後半は、医療人類学的な考察で、タイを中心とするトランスジェンダーのフィールドワーク調査の紹介。
とても博識な方で、時間がまったく足りなかった。
特に、私が興味がある、後半の医療人類学的フィールドワークの成果は、もっとじっくりお話をうかがいたかった。
(続く)
5時半、起床(ホテル・ヴィアイン心斎橋長堀通)。
外はまだ真っ暗。
朝食は、コンビニで買ったパンとコーヒー。
化粧と身支度。
濃紫に明るい紫、灰紫、灰緑で片矢羽を織り出した足利銘仙(きものACT)。
若草色にカタバミ紋を染め抜いた半襟を付けた黒地に唐草模様の長襦袢(紫織庵)。
錆朱・黒・樺色の横縞の帯を角出しに結ぶ。
帯揚は辛子色(ゑり正)、帯絞は草色(福福堂)。
焼桐の台に濃紺の麻の葉柄の鼻緒をすげた右近下駄(浅草花川戸・長谷川)。
焦げ茶色のトートバッグ。
黒のカシミアのショール。
7時過ぎ、ホテルを出る。
地下道を歩いて地下鉄御堂筋線の心斎橋駅へ。
ちょうど「なかもず」行きがホームにいたので乗る。
20分ほどで終点のなかもず駅に到着。
駅から大阪府立大学へは、歩くと遠い、タクシーだと近い、微妙な距離。
普段なら歩くのだが、道筋に不安。
いきなり迷うのも嫌なのでタクシーに乗る。
あっという間に到着(基本料金680円)。
白鷺門から大学構内に入る。
かなり広い。
不思議な石のモニュメントが立っている。
キャンパス・マップによると、会場はかなり奥。
実は、私、6年ほど前(2009年7月)に、この大学の女性学センターの女性学連続講座「ジェンダーを装う」に呼んでいただき講演をしている。
「トランスジェンダー(性別越境)観の変容 -近世から近代へ-」とういう題で、後に岩波講座 『日本の思想 第5巻 身と心』(2013年)に執筆した「性と愛のはざま-近代的ジェンダー・セクシュアリティ観を疑う-」の原型になった講演で、自分としてはかなり重要な講演だったのだが、なかもず駅にも大学にも、既視感がまったくない。
あの時、どうやって大学まで行ったのか、完全に記憶が欠落している。
「かなり記憶力は良い方だと思うけど、不思議だなぁ。いよいよ呆けてきたのかなぁ」と思いながらトコトコ歩くうちに、どうやら目的に建物に着いた。
なんの案内も出ていないので「ここでいいのだろうか?」と思いながら接近していくと、建物の中から魔女のような黒い服装の女性が現れる。
おおっ!今回の大会長の東優子教授ではないか。
「おはようございます、今回はお世話になります」と挨拶すると、「研修会はあっちの建物よ」と案内してくれる。
なんで、一番偉い人が、道案内してるんだろう?
ということで、8時20分「第1回GID研修会」の会場に到着。
講師の針間克己先生や鶴田幸恵さんにご挨拶。
開会までの間、針間先生と情報交換。
8時30分「第1回GID研修会」開会。
座長は、松本洋輔先生と(岡山大学病院 精神科神経科)と康純先生(大阪医科大学附属病院 精神神経科)。
1. 鶴田幸恵(千葉大学文学部)「脱病理化と脱医療化――日常生活との関連で」
社会学の立場から概念をベーシックに解説。
「病理化(Pathologization)」多くの人間の違いを病理に組み替えること。
(例)肥満(→メタボリック・シンドローム)、喫煙
「医療化(Medicalization)」医療の対象にすること。病理化されたものを医学が囲い込むこと。
「脱病理化(Depathologization)」病理とされたものが、そこから解き放たれること。
(例)同性愛(罪→疾患→ライフスタイル)
「脱医療化(Demedicalization)」医療の対象であったものが医療の対象でなくなること(ライフスタイル化する)。
脱病理化することと、医療的ケアを受けることは別のこと。
ライフスタイルに合わせて医療を選択する(ニーズに合わせたケア)。
医療社会学的な定義と、欧米のトランスジェンダー運動家が使う概念に微妙なズレがあることなど、勉強になった。
2. 針間克己(はりまメンタルクリニック)「精神科における性別違和の診療」
性別違和診療の現場のお話。
とりわけ、「自分史」をめぐるいくつかのトンデモ事例はとても面白く、今回のGID学会ではいちばん笑ってしまったが、「ブログに書かないでください」と念押しされたので書けない。
精神科医は、「自分史」の細かな内容や真偽よりも、「自分史」の作成という作業を通して、思考パターン、コミュニケーション力、社会適応パターンを見ているとのこと。
なるほど・・・と思う。
3. 内島 豊(赤心クリニック)「ホルモン治療の基礎と臨床」
女性の閉経期に相当する高齢MtFの女性ホルモン投与量を「減らすべきか?」という質問に対して、「中高年男性の男性ホルモンの量は個人差があり、(それに対抗する)女性ホルモンを(一律に)減らすことは必要ない」という回答。
まあ、美容的見地からすると、女性ホルモン投与を続けた方るメリットはあるが、だからといって、若いMtFと同じ量を60~70代になっても投与し続けるというのは、身体への負荷としていかがなものか?と素人的には思うが、専門家の見解は違うようだ。
4. 百澤 明(山梨大学医学部附属病院 形成外科)「形成外科におけるGIDの外科治療」
SRS(Sex Reassignment Surgery=性別適合手術)だけでなくFFS(Facial Feminization Surgery=顔面整容的女性化手術)の症例報告があった。
以前から、日本のGID医療の中でFFSが軽視され、当事者の関心も薄いことに疑問を抱き、MtFの性別移行におけるFFSの有効性を主張してきた私にとっては、とてもうれしいお話だった。
10時40分、閉会。
この研修会は「身体的治療の保険適応」の基礎になる「専門医(認定医)取得の必須条件となる専門医(認定医)研修を想定して企画」された「臨床系の先生方」向けのもの。
一昨日(19日)に発表されたプログラムが興味深かったので、企画者の先生に「聴きに行っていいですか?」と打診したら「GID学会の会員ならOKです」というお返事だったので、早起きして参加した。
早朝から、興味深いお話をいろいろ聞けて、早起きした甲斐が有った。
10時45分、メイン会場に移動。
10時50分、「GID(性同一性障害)学会第17回研究大会・トランスジェンダーの健康と権利」開会(まだ、始まっていなかったんだ)。
大会長の東優子大阪府立大学教授によるオープニング・セレモニー。
それにしても、GID学会の大会テーマに「トランスジェンダー」の文字があることに、長年「悪の思想」として弾圧されてきたトランスジェンダリズム派としてはもう大感激。
↑ あれ?私が出てきた(黄色い服の人)・・・。
この写真は、1997年7月19日に開催された日本最初の性同一性障害についての公開シンポジウム「性同一性障害の過去・現在・未来」(東京神田:学士会館、主催:TSとTGを支える人々の会)の時のもの。
東優子さん(右から2人目)と私(右端)のダブル司会。
当時、東さんはハワイ大学帰りの新進気鋭のセクソロジー研究者だった。
続いて、高垣雅緒先生(藍野大学短期大学部教授)の基調講演「 トランスジェダー の脱病理化と人権 の脱病理化と人権」。
高垣先生は、脳腫瘍などを専門とされる脳外科医であり、医療人類学を研究されている方。
今回の講演は、前半は脳科学の見地から「トランスジェンダーの病態」を考察し「脱精神疾患化」が正当なものであることを主張。
後半は、医療人類学的な考察で、タイを中心とするトランスジェンダーのフィールドワーク調査の紹介。
とても博識な方で、時間がまったく足りなかった。
特に、私が興味がある、後半の医療人類学的フィールドワークの成果は、もっとじっくりお話をうかがいたかった。
(続く)
2015-03-21 23:04
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by 戸川優貴 (2015-03-22 08:33)