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もしも、富士山が噴火した場合・・・ [地震・火山・地質]

10月2日(木)


もしも、富士山が噴火した場合・・・・。
世の中のかなり多くの人は、富士山の山頂から噴煙が上がる様子をイメージしているのではないだろうか?
20061115204922.jpg
まあ、こう(↑)はならないとも言い切れないのだが、可能性としては山頂噴火は少ないと思う。
なぜなら、少なくともはっきりした記録が残っているこの1500年ほど、富士山が山頂から大噴火したことがないからだ。

一番新しい大噴火は307年前、江戸時代中期の1707年(宝永4)の「宝永の大噴火」で、このときは、下の絵にあるように山腹噴火だった。
fujisanfunka.jpg
(裾野市立富士山資料館所蔵)
画像イメージにすると、こんな感じになる。
20121007-3.jpg
宝永の火口は、富士山の南東斜面、およそ標高2600mのところにある。
富士宮口五合目(2400m)と大差ない高さだ。
南東方向から見ると大きな爆裂火口であることがわかる。
火山学用語では「側火山」ということになる。
800px-Mount_Hoei_from_Jyuriki.jpg

その前の大噴火は平安時代前期の「貞観大噴火」で、864年(貞観6)6月に始まり、866年(貞観8)初頭まで続いた。
大量の溶岩が流出し、現在の「青木ヶ原溶岩原」を形成し、一部は「剗の海(せのうみ)」(富士山北麓にあった大きな湖)に流入し、これを埋めて分断した(残った水面が現在の西湖と精進湖)。
この溶岩を噴出した火口は、山頂から北西斜面約10Km地点にある、現在の長尾山と推定されている。
長尾山は標高1424mで、富士山の山腹というより山麓に近い。
つまり「貞観の大噴火」は山麓噴火だった。

さらにその前尾大噴火は平安時代初頭の「延暦の大噴火」で、800年(延暦17)に始まり、802年(延暦19)まで続いた。
この時の噴火でも大量の溶岩が流出したが、火山学者で富士山の噴火史研究では第一人者の小山真人氏(静岡大学教授)によれば、富士山北東麓を広くおおう「鷹丸尾溶岩」と「檜丸尾第2溶岩」が延暦の大噴火によって流出した溶岩に相当し、その供給源は北東斜面の「西小富士噴火割れ目」と推定される。
(参照)小山真人「富士山の歴史噴火総覧」(2007年)
http://www.yies.pref.yamanashi.jp/fujikazan/web/P119-136.pdf
「西小富士噴火割れ目」の標高は1880mなので、やはり山腹噴火だった。

富士山は側火山がきわめて多いことで知られているが、その分布には一定の傾向がある。
富士山(側火山分布).jpg
富士山の側火山の分布(静岡大学防災総合センター)
http://sakuya.ed.shizuoka.ac.jp/sbosai/fuji/wakaru/013.html
富士山(側火山分布)2.jpg
図や画像(カシミール)を見ればわかるように、北西から山頂を通り南東に至るラインに側火山が数多く分布している。
「貞観の大噴火」と「宝永の大噴火」はこのライン上で起こった。
さらに、よく見ると、北西~南東のラインの直交する北東~南西のライン上にも側火山が分布する。
「延暦の大噴火」はこちらのラインで起こった。

こうしたラインは、富士山が乗っている地殻をフィリピン海プレートに乗った伊豆半島が南から強く圧迫している結果、生じた地殻のの弱線と思われる。

ということで、もしも富士山が大噴火するとしたら、山頂噴火ではなく、山腹(あるいは山麓)噴火であり、その位置は、山頂の北西側か南東側である可能性が高い。
防災的にも山頂噴火だけを前提に考えない方が良いと思う。

今のところ、富士山では噴火につながるような予兆は観測されていない。
あのくらいの規模の火山で、しかも観測体制がそれなりに整っているので、まったく予兆がなく大噴火するとは、私には思えない。
マグマの上昇をともなう噴火なら、おそらく予兆はつかめるはずだ。
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コメント 2

h.k

 日本には富士山を含めて、数多くの火山がありますので、
気象庁には、わずかでも火山性微動が観測されれば、
ネットに公表してもらいたものですね。

地震予知も難しいが、火山噴火もそれ以上に難しそうです。
たとえ、空振りに終わってもいいですから、
(つまり、はずれてもいいから)、火山性微動などの
危険な兆候が現れれば、積極的に情報を公開してもらいたい。

 また、火山の噴火が冷夏など、気象にも影響を与える
かもしれません。

どうかこれ以上、天変地異は起きて欲しくないものです。

 by h.k
by h.k (2014-10-04 14:32) 

三橋順子

h.kさん、いらっしゃいま~せ。
火山の噴火の正確な予知は、経験則が蓄積している特定の火山(北海道の有珠山や伊豆大島の三原山など)を除けば、ほとんど不可能です。
今回の御嶽山の場合、たしかに火山性の地震は増加していましたが、それだけで、警戒レベルを「入山規制」の2に上げるのは、正直言って難し勝ったと思います。

おっしゃるように、観測に異変があった場合、情報を公開することには賛成です。
ただし、現在の登山者のほとんどは、そうした情報公開が有ったとしても、調べもしないでしょう。
そのくらい登山者のレベルは落ちていますから。



by 三橋順子 (2014-10-05 01:14) 

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