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身元不明高齢者のジェンダー問題 [お仕事(講義・講演)]

6月14日(土)
「ジェンダー論」の講義の最初の時間(ガイダンス)で、「なぜジェンダー&セクシュアリティ論を学ぶのか?」という「動機づけ」の話をする。
その中で、従来の「ジェンダー論」は、男性=社会的強者、女性=社会的弱者という構造を前提にしていたが、はたしてそうだろうか?という問いかけをする。
男性=社会的強者、女性=社会的弱者という認識を否定するのではなく、それを鵜呑みにせず疑ってみようということだ。

その一例として、ホームレスの人たちの性比を取り上げる。
そもそもホームレスの人の性別比なんて、ほとんどの人が気にしていない(そのことは別の社会問題なのだが)。
問われてはじめて、「ほとんどが男性のように思う」ということになる。
実際には女性のホームレスもいる(最近、増えている)が、だいたい95%くらいは男性である。
なぜ、「社会的関係性を失ってしまった人たち」(私のホームレスの定義)のほとんどが男性なのか?
それは、男性が現代社会の中で強者であるという認識と矛盾しないか?と問いかけてみる。

次に、少し以前に問題化した戸籍上は生きていることになっているが実際には存在しない「非実在高齢者」の話をする。
実在する高齢者は圧倒的に女性が多いのに、非実在高齢者は男性が多いことを紹介する。

さらに、友人のケアマネージャーさんが言っていたこんな話を紹介する。
「公の場ではいえないことだけど、おばあちゃんが居なくなった場合、家族や近所の人は本気で心配して探し回る。でも、おじいちゃんがいなくなった場合は必ずしもそうじゃないのよねぇ」
たしかに、若い時からずっと極道で、家族だけでなく近所にも迷惑をかけ続けた爺さんが居なくなった場合、周囲の人たちが本気で探すかといえば、かなり疑問だ。

その上でこの3つの話をリンクさせてみる。
男性が家出・行方不明―(探さない)→ホームレス化→(死亡)→身元不明の行路病死者として処理→(死亡届が出ないので戸籍には名前が残る)→非実在高齢者化

そして、もう一度、ほんとうに男性は現代社会の中で強者なのでしょうか?と問いかける。

「ジェンダー論」を学ぶ際には、女性問題や性的マイノリティ問題という視点だけでなく、男性問題という視点も必要であること、男性にとってもジェンダー問題は他人事ではない切実な問題であることを学生さん(とくに男子学生)さんに理解してもらう。
ジェンダー論=女性学と考える伝統的なフェミニストからしたら、非難囂々なのは承知しているが、これが私の「ジェンダー論」の基本姿勢だ。

さて、実はここまでは長い前置きである。
今朝の『朝日新聞』(2014年6月14日朝刊)にこんな記事が出ていた。
SCN_0059 (3).jpg
千葉県の施設に収容されている「身元不明」の方の情報である。
6人全員が男性である。
見事なまでにお爺さんばかりで、お婆さんは1人もいない。
もちろん、これらの方々が、家族や近所に迷惑をかけ続けたあげくに探してもらえなくなった爺さんであると言っているわけではない。
ご本人にもご家族・縁者にもそれぞれ事情があるのだろう。
あるいは天涯孤独な方なのかもしれない。
一日も早く、身元が判明し、ご家族・縁者と再会されることを願っている。

しかし、これだけ性別比が偏っているということは、明らかにジェンダー問題であり、前述のケアマネさんの言葉が頭を過ぎる。

この記事、後期の講義の資料として使おう。


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