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女性同士の婚姻届、不受理の理由は憲法第24条第1項 [現代の性(同性愛・L/G/B/T)]

6月6日(金)
青森市が女性同士の婚姻届を不受理とし、その理由が日本国憲法第24条第1項であるとする「不受理証明書」を提出した。

『東奥日報』掲載の画像が小さくて不鮮明だが、「上記〇〇は、平成26年6月5日、日本国憲法第24条第1項により受理しなかったことを証明する」と読める。

日本国憲法第24条第1項とは「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」の条文。

憲法第24条第1項の「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し」の法意は、婚姻は当事者の合意のみによって成立し、親など他者の介入や強制を認めないとするもの。
同時に法文を「両人の合意」ではなく「両性の合意」にしたのは、異性婚しか想定していないことを示している。
憲法が公布された時点では同性婚などというものは想定されていないから、否定する必要すらなかった(民法なども同様)。
つまり、「異性婚しか想定していない」=「同性婚は想定していない」が法意である。
これを明文として否定していないから「同性婚を否定していない」と解釈するのは法意に乖り、こじつけに近い。

さらに、憲法の条文の「両性の合意」の「両性」とは、国語学的にいって「男と女」と解釈するのが普通(例、「両性具有」など)。
これを「男と男」「女と女」と解釈するのは相当に無理で、「自衛隊は戦力ではない」と同様の解釈改憲である。
解釈改憲はすべきではない。
9条の解釈改憲は「悪」だが、24条の解釈改憲は「善」みたいな考えは、まさにご都合主義のダブル・スタンダードであり、私は採らない。
物事の実現のためには、筋を曲げてもいいとは私は思わない。
とくに社会の根幹にかかわる問題では、そういう安易な方法は取るべきではない。
だから、日本で同性婚を法的に認めようとするならば、ほとんど詭弁に近いような言説を弄するのではなく、堂々と憲法改正を求めて実現するのが筋だと思う。

憲法24条の改正が現実的でない(あるいは、日本国憲法は「不磨の大典」だから手を加えるべきではない)と言うのなら、婚姻と同様の権利・義務を定める同性パートナーシップ法の成立を求めていくべきだろう。
私は、それが最も現実的な方策で、同性パートナーの人権擁護につながる早道だと思う。

いずれにしろ、同性同士の婚姻届が不受理な理由が「日本国憲法第24条第1項」であることを現実に確認した(法体系的にこれまでも予想できたことだが)ことで、申請者の方が言う通り「ここからが始まり」だと思う。

青森県の地方紙『東奥日報』記事は、内容が詳細なだけでなく、当事者の主張のポイントをバランスよく、しかもしっかり汲み取っていて、記者がよく勉強していることがわかる、とても優れもの。
中央の大手新聞の社会部記者も、せめてこのレベルの記事を書いてほしいものだ。

【追記1】
書き忘れたが、記事(の最後の方)をよく読むと、不受理の理由を憲法第24条第1項求めたのは、青森市の判断ではなく、青森地方法務局の示唆によるものであることがわかる。
青森地方法務局は、法務省の出先機関(地方支分部局)だから、これは法務省の判断だと考えるべき。
つまり、今後、どの市町村長に同性カップルが婚姻届を出しても、同じ不受理理由になる可能性が高い。
また、これも同然のことなのだが、青森市には憲法24条1項目の「両性の合意」について解釈判断する権限はない。
それは最高裁判所の仕事。

【追記2】
私は文学部出身で法学部出身ではないので、律令法と日本法制史は大学院レベルの勉強をしたが、現行の憲法・法律については学部の一般教養の「法学」レベルでしか勉強していない(ただし、本気で勉強したが)。
私が法学を学んだ小林宏先生がおっしゃったことで、今でも大事にしているのは、次の2つ。
(1) 法の解釈は立法の趣旨(法意)を大事にしなさい。
(2) その場、その場でのご都合主義的解釈は駄目です。
上に書いた、私の憲法24条1項の解釈は、それに基づいている。
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女性カップルが婚姻届、青森市、憲法根拠に不受理

同性愛者ら性的少数者や性暴力被害者の支援を行っている青森市のAさん(46)とBさん、(29)の女性同士のカップルが5日、青森市役所に婚姻届を提出した。同市は憲法を根拠に受理せず、2人の求めに応じ不受理証明書を発行した。2人は「性的少数者の存在に目を向けてほしい、婚姻制度を使えない人がいることを知ってほしいと思い提出した。不受理の判断が出たここからが始まりだと思う」と話している。

憲法第24条1項で「1婚姻は両性の合意のみに基いて成立」(原文のまま)と記されており、性的少数者もサポートを行っている「岩手レインボー・ネットワーク」代表の山下梓さん(31)は「公に婚姻届けを提出する同性カップルは今回が国内で初めてではないか」と話している

2人は同日午後、各地から駆けつけた支援者ら10人と青森市役所を訪れ、婚姻届を提出した。本来の書式のほか、「夫」「妻」の項目を消したものなど計3種類の婚姻届を提示。市は本来の書式を受け付けた。

市は約1時間後、不受理の判断を2人に伝え、その後、「日本国憲法第24条1項により受理しなかったことを証明する」と記した不受理証明書を発行した。

不受理後、Bさんは「婚姻関係がどうして両性でなければならないのかという答えはもらえなかった。(社会制度を変えていく)訴えは続けていくと思う」と話し、Aさんは「前例がないため、実際どのような判断がされるか分からなかった。不受理という結果を受けた、ここからが始まりだと思う」と話していた、

2人は、同性パートナーが社会生活を営む上で、法的に認められている夫婦と大きな差があることを指摘。「同性愛者というだけで、なぜ特別な努力をしなければならないのか。社会の中で私たちは見えない存在なのか」と訴えた。

また山下さんは今回の婚姻届提出について「社会制度の変革に向けて大きな一歩になっただけでなく、地方にも性的少数者が生きているということを発信した。この意味は大きい」と話している。

山下さんによると、海外で同性結婚を認めている国はオランダ、英国など16カ国に及んでいる(本紙取材班)

議論尽くす必要
青森中央学院大学・太田航平講師(憲法)
憲法第24条1項の「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立」の文言が、同性婚を認めないかどうかの根拠になるかは、憲法論者によっても解釈が分かれている。
私の見解としては、同性カップルの婚姻を認めないことは憲法違反だとは言えないが、同性カップルが異性婚カップルに比べて何も保護されていないことに合理的理由は見当たらず、憲法上、問題があると言える。不平等状態を解消するため、議論を尽くす必要がある。

証明書発行まで2時間半
2人が婚姻届けを提出するために窓口を訪れてから、青森市が不受理証明書を発行するまで、約2時間半の時間を要した。

青森市役所市民課によると、同性同士の婚姻届提出は初めて。対応については、青森地方法務局に助言を求めたという。

同課の館山新課長は本紙の取材に対して「市の判断ということではなく、今の法制度上、憲法24条1項で「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する」となっていることから、同性同士の届け出は不受理扱いとした」と理由について説明した。「両性」のとらえ方については明言しなかった。

同市では、書類の不備により手続きができないことはあるが、書類受け付け後に不受理になった例はないという。

【画像】青森市から2人が受け取った不受理証明書
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『東奥日報』2014年6月6日(金)朝刊
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コメント 4

YUKO

このケースに関しては素直にエールを送りたいです。
そして、今後どうなっていくのかを見守りたいと思います。


by YUKO (2014-06-06 17:48) 

三橋順子

YUKOさん、いらっしゃいま~せ。
同感です。大都会にたくさいいるはずのゲイではなく、地方都市に暮らすレズビアンが行動したという点で、応援したくなりました。
だから、頑張って全文文字入力しました。
少しでも、多くの人に知ってもらいたくて。

by 三橋順子 (2014-06-06 19:00) 

AJ

入力おつかれさまです。
「同士」→「同市」
by AJ (2014-06-06 21:41) 

三橋順子

AJさん、いらっしゃいま~せ。
誤植の指摘、ありがとうございます。
訂正しました。
by 三橋順子 (2014-06-06 21:58) 

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