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「異性装障害」は愚の骨頂 [現代の性(性別越境・性別移行)]

6月2日(月)
そもそは、DSM-5が、Transvestic Disorderなんていう時代遅れの概念を精神疾患リストに残したのが間違いなのだ。
異性の服を身に着けることに性的興奮を伴う人は、たしかにいるが、それがなぜいけないのだろう。

彼らの行為の多くは、密室で行われる個人の性的な営みであり、社会性をほとんど持たない。
したがって、社会に迷惑をかけることもほとんどない。

中には、女装して外出することに性的興奮を覚える人もいるが、それはTransvestic Disorderとしては軽症だと思う。
昔、ある女装系の店の会員さんに、どうしても女装で店に来られない人がいた。
彼は「支度部屋」で女性の下着を身に着けた途端に、激しく性的興奮して射精してしまい、その後は急速にテンションが落ちて、女装行為を続けられなくなる。
こうした重症のTransvestic Disorderの場合、行為としては、長くて数分、場合によっては秒単位の話になる。
果たして、こうした人たちを精神疾患として概念化し、治療対象にすることが必要だろうか?
私には、おおいに疑問だ。

そもそも、どういう方向で治療するのか?
女装行為そのものを止めさせる方向か、それとも女性下着を身に着けても即座に射精しない方向か?
当人が望むのは後者だろうが、治療方針をまじめに考えるだけ馬鹿らしいと思ってしまう。
こんなものは、性的嗜好(Sexual Preference)の一種、つまり個人の性癖であって、精神疾患として医療が介入するような話ではない。

では、精神科医はなぜ、彼らにTransvestic Disorderという病名をつけて病理化しようとするのか?
それは、異性装という行為が、ユダヤ―キリスト教世界では神の教え(旧約聖書)に背く行為であり、宗教犯罪だったからだ。
そうした宗教犯罪とされた行為のいくつかを、19世紀後半に始まる近代精神医学が犯罪ではなく精神病として
囲い込んだからだ(犯罪から病理へ)。
そうした19世紀的な発想を21世紀の現代まで引きずっているわけで、時代遅れも甚だしい。
まあ、アメリカ社会では、いまだに「神の教え」は生きている。
異性装者が背教者として弾圧されないように精神疾患として囲い込む必要もまだあるのかもしれない。

しかし、日本には、異性装者が背教者であった時代はない。
むしろ、異性装者は常人より神に近い存在だった形跡すら濃厚に有る。
そんな日本で、Transvestic Disorderという疾患概念を、アメリカ直輸入的に受け入れ、「異性装障害」という訳語を与えるなど、まさに愚の骨頂である。

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コメント 6

AJ

そういえば、ICD11では、廃止の方向の案となっています。
その案に賛成だと、わたしもコメントをICD11の委員に送りました。
by AJ (2014-06-03 08:20) 

三橋順子

AJさん、いらっしゃいま~せ。
>ICD11では、廃止の方向の案となっています。
Dr.Sam Winterも「間違いなくゴミ箱行き」と言っていました。
そんなもう寿命が尽きかかっている疾患名の訳語を、今、敢えて変更しようとするのも理解できません。
by 三橋順子 (2014-06-03 10:43) 

so

三橋さんの記述には、そうだと賛同したいのですが。果たして現実はどうでしょうか?
「異性装+性的興奮=Transvestic Disorder である。」このような症状を、別の言い方をすれば、「性的興奮を求めて異性装をする」このタイプの異性装者が夜の街、映画館、ハッテン場に溢れています。
その人たちの多くは常識を外れた行動をしています。そして、感染症を撒き散らしているのです。それを、障害と言わずしてなんと...!
ICDでもF64から外してF65へ分類されるべきだと思う。
ようするに、三橋さんが仰る異性装としての枠を超えた異性装の人たちは「異性装障害」と言わざる得ないと…。
by so (2014-06-05 02:12) 

三橋順子

soさん、いらっしゃいま~せ。
>その人たちの多くは常識を外れた行動をしています
>そして、感染症を撒き散らしているのです。それを、障害と言わずしてなんと...!

まず、こうした人たちを「異性装障害」として精神疾患認定したところで、改善される見込みがほとんどないと思います。
なぜなら、彼らは「治療」を望んでいないのでメンタルクリニックに行かないし、仮に通院したとしても、医療の側に有効な治療方法がないからです。
つまり、病理化してもほとんど無意味だということです。

こうしたハッテン場が、もしHIV感染拡大の温床になっているのだとしたら、それは保健衛生(感染症予防)の問題として対処すべきことで、精神疾患とする理由になりません。
また、本来、映画を観賞する公共の場である映画館を、ハッテン行為の場として利用することは、社会的に許容されることではなく、厳格に言えば、犯罪(公然わいせつ罪)です。
ところが、公然わいせつ罪で摘発しても、「異性装障害」という精神疾患であるとされると、病気が原因ということで、不起訴もしくは減刑されること予想されますが。
つまり、犯罪行為の逃げ道に精神疾患が利用されることになりかねません。可能性が出てきます。
と言うことで、私はsoさんのご指摘には同意できません。
by 三橋順子 (2014-06-05 22:47) 

Gen

う~ん、嫌な流れですね。
そんなアホくさい事、なぜわざわざやりたがるのか私にはその意図が理解できません。
彼らがなにかほかの人に迷惑をかけたんでしょうか?
迷惑なら、盗撮や電車の痴漢の方がよほどひどいし、彼らこそ治療が必要です。
自分ではやめられず、ほかの人に多大な迷惑をかけて生きているんですから。
彼らこそ保険の対象にして治療すべきです。
その方がよほど社会のためになります。
その、下着を長く身に付けられるように治療するって下り、悪いけど笑えました。
そのくらい興奮しちゃうんだって、なんか感動的でもありますけど。
それより、病理化した後で精神科の先生が深刻な顔でそういう悩みに耳を傾けて
「それはお辛いですね。ではお薬を出しますので云々」
とか言うのかと思うと、本気で言ってるのか?としか思えず・・・。
ご本人はもう少し着ていたい、でももたない、くらい、可愛い悩みに聞こえます。EDの悩みと一緒だし。
なんでそんなに個人の性的嗜好に国が容喙したがるんだとそこが非常に引っかかりますね。
お偉い先生は変な事を考えるものですねぇ。
ノーマルなのがそんなに偉いのかって私には不思議でたまりません。
生きやすいのは確かだけど、それだけですよね?
人に迷惑かけないなら何考えたってどんな性行為が好みかなんて余計なお世話です。

by Gen (2014-06-13 01:33) 

三橋順子

Transvestic Disorderって、まじめな話、どういう方向で治療するのか、わからないのです。
女装しても性的興奮を起こさないようになれば「治癒」したことになるのか、それとも女装する気を起こさなくならないと「治癒」じゃないのか?
これ、落ち着くところが、ぜんぜん違うんですよね(笑)
日本精神神経学会で、専門の先生に質問してみようかな。
by 三橋順子 (2014-06-13 04:13) 

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