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5月30日(金)浜野佐知監督・山崎邦紀脚本、映画『BODY TROUBLE ―ボディ・トラブル―』 [映画・コンサート]

5月30日(金)  晴れ  東京  29.0度   湿度49%(15時)
9時、起床。
シャワーを浴びて髪と身体を洗う。
髪にあんこを入れて頭頂部で結わえて、黄色のシュシュを巻く。
化粧と身支度。
黒地に茶と白の花柄のロングチュニック(3分袖)、黒のレギンス(5分)、黒のサンダル、黒のトートバッグ。
12時過ぎ、家を出る。
かなり気温は上がっているが、風があり、湿度が低いので、それほど汗はかかない。

東急東横線で学芸大学駅で移動。
「クロネコ」出張所で宅急便を受け取った後、昼食。
何年かぶりでカレーの「coco壱番屋」へ。
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↑ インドカレー(チキン)の2辛(ご飯200g)
予想以上に辛くてかなり発汗。
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↑ 卵サラダ
以前よりお皿が大きくなり量が増えた?
東急東横線(渋谷駅乗換)京王井の頭線(明大前駅乗換)京王本線と乗り継ぐ。
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柴崎は、初めて降りる駅。
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何度も通過しているはずだが「そんな駅あったっけ?」という感じ。
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駅を出るとすぐに細い道で、駅前広場もなく、駅前商店街もほとんどない小さな駅。
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でも、都市地理学の「お約束」である「駅前の果物屋」はちゃんとあった。

なぜこここに来たかというと、調布市の「東映ラボ・テック」で、浜野佐知監督・山崎邦紀脚本の映画『BODY TROUBLE ―ボディ・トラブル―』( 制作:浜野組・旦々舎、R15指定、90分)の完成試写会があったから。
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この映画、引き籠りのニートの駄目駄目青年が、ある朝、起きてみたら、AV女優並の美女に変身していたという、今どき素人が書く小説もどきでも「それはちょっと」と言われそうな超ベタな設定。
男が女になるのに、何の苦労もなく若くて魅力的な美女になれるのだったら、こんな楽なことはない。
その後も、トランスジェンダーの実践者からすると、まじめに見たら腹が立つような、リアリティのない展開が続く。

山崎さんの脚本は、植島啓司『男が女になる病気―医学の人類学的構造についての三〇の断片―』に起点があるそうだが、この本は1980年の初版。
私も若い頃に読んだし、当時としてはいたって斬新な内容だが、はっきり言って、今では古い。
その後34年間のトランスジェンダー論の進展は、自分で言うのもなんだが、相当の進展がある。
「そんな昔の本じゃなく、私が書いたもの、読んでよ!」 と言いたくなる。

でも、これが脚本家の山崎さんが30数年間温めてきた妄想、もとい、ファンタジーなのだと思えば、腹も立たず、けっこう楽しく見ることができた。
23年前、日本初の商業ベースの女装雑誌『クロス・ドレッシング』(光彩書房、1991年12月)を編集し、「返本率7割」という驚異的な数字を記録した山崎さんの長年の想いが形になってほんとうに良かったと思う。

この世知辛い世の中、観客の批評とか、採算とかをほとんど考えず、芸術家が自分のセクシュアル・ファンタジー(性幻想)に忠実に、これだけの映像を作れるって、めったにないことで、それだけでも素晴らしいことだと思う。

山崎さんの妄想がてんこ盛りの脚本に浜野監督は相当に苦労されたらしい。
でも、やはりちゃんと浜野監督の作品になっている。
映像の美しさはいつものことだし、登場する男たちは例外なく駄目駄目で、女たちはそれぞれにかっこいい。

フィルムに強い愛着を持っている浜野監督にとって、初のデジタル制作作品。
「監督がフィルムと心中しちゃうのではないか」と心配していた私としては、監督が「デジタルも面白かった。また100本くらい撮りたくなった」とおっしゃっていたのが、いちばんうれしかった。

主演の愛田奈々さんは、男性の意識を残しながら美女になった主人公の戸惑いと、女性としてのぎこちなさを上手に表現していて新境地。
ゲスト出演の菜葉菜さんは前世は男性だった女性を演じて、「百合子、ダスヴィダーニヤ」の湯浅芳子役に続き、レズビアン心を刺激するかっこいい役。

トランスジェンダー論の専門家としては、指摘したいことはいろいろあるが、1つだけ、興味深く思ったポイント。
引き籠りの青年が、女になった途端に、なぜか外を平然と歩けるようになり、初対面の人間とちゃんとコミュニケーションを取れるようになる。
エロ本の山があちこちにある万年床の乱雑極まる屋根裏部屋がだんだんきれいになり最後は布団も畳まれる。
つまり、駄目駄目な人間がどんどん真人間になっていく。
男から女に変わったことで、性別だけでなく人間性が改善されるのだ。

こうした設定は、映画『僕の中のオトコの娘』(窪田将治監督・脚本、2012年)でも見られたが、『BODY TROUBLE ―ボディ・トラブル―』ではもっとあからさま。
最初は駄目息子が女になったことをまったく信じず冷たく突き放す主人公の母親が、最後には「まともな人間になるんだったら女になるのも悪くないね」みたいなことを言い出す。

現実には、男で駄目な人間は、ほとんどの場合、女になっても駄目なわけで、女性になることで、すべてが良い方向に動き出す、というのはまったくのファンタジーだ。
でも、そうしたファンタジーは意外に広く共有されているのかもしれない。

先ほど、トランスジェンダーの実践者が、まじめに見たら腹が立つ、と言ったが、世の中、トランスジェンダーの実践者よりも、トランスジェンダー願望を密かに抱きながら実践できない男性の方がずっと多い。
私の経験からすると、女装者好きの男性のかなり(半数以上)は、ほんとうは自分が女になりたいのだ。

この映画は、そうした女性への性転換願望(「女になりたい」)を密かに抱いている男性、さらに女性に性転換したどこか双性(Double Gender)的な魅力がある人と女同士でいちゃいちゃ遊びたい女性に、お薦めの映画だと思う。

【追記】この映画評、脚本の山崎邦紀さんのお心をかなり傷つけてしまったようで、長年、お付き合いいただいた者として、たいへん申し訳なかったと思う。
ただ、トランスジェンダー論を専門とする者としては、これでもかなり肯定的に批評したつもり。
それが、お心に叶わなかったのは残念だが、映画芸術に疎い者の妄言として無視していただければと思う。


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C Sato

「女性になることで、すべてが良い方向に動き出す、というのはまったくのファンタジーだ。」

重要なご指摘とおもいました。

先日、出席する機会があった、TS系のトランスをすすめる・身内の会、のようなものでは、
残念ながら、負の要素は、紹介されていなくて、タイで手術しましょう、みたいな乗りでした。

だれが介入するかといえば、現状では診断書を書く医師に期待するしかないのですが、上記の会では、診断書簡単にとる方法、も紹介されていたし、先日ご紹介されていた、自死されてしまった医師は、どちらかというと、あおる感じの接し方をされていたような、エピソードを耳にしたこともあります。

自己決定、自己責任論、でかたづけてしまえば、簡単ですが、
情報の偏り、は、気になるところです。




by C Sato (2014-06-01 18:05) 

三橋順子

C Satoさん、いらっしゃいま~せ。
簡単に診断書を書いてくれる医者が「良い医者」、
細かいことを言わずに手術してくれるのが「良い医者」
というのは、もう15年くらいずっとそうです。
そこに最近は「アテンド会社」(斡旋業者)が入って来て、どんどん手術を勧めます。
当事者も、自分の身体や人生についての考え方がどんどん安易になっているように思います。
水が低い方向に流れるようなもので、システム全体が劣化していく、医療倫理とか商業倫理とか言っても仕方がない状況です。
こういう状況になった根本的な原因は「GID特例法」だと、私は考えています。

まあ、こういう状況を私が批判したところで、まったくの多勢に無勢でどうなるものではありません。
私がGIDに関する講演で「枕詞」として必ず言う
「自分の性別に悩み、性別を移行したい人たちが、性同一性障害者として、医療(性別適合手術)によって性器の外形を変え、「特例法」によって戸籍の性別を変更することで、幸せになれるのなら、それはそれでたいへん結構なことだと思います」(棒読み)
ということです。
by 三橋順子 (2014-06-02 13:09) 

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