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2月15日(土)「Asian and Pacific trans community leaders working in health and rights」-「WPATH 2014 Symposium in Bangkok」参加記(2日目の2) [現代の性(WPATH 2014)]

2月15日(土)
(続き)
今回の「WPATH 2014」の大きな特色は、UNDP(国際連合開発計画)、UNAIDS(国際連合エイズ合同計画)、WHO(世界保健機関)、UNWOMAN(ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関)の支援でスペシャルセッション・シリーズ(連続シンポジウム)「Trans People in Asia and the Pacific」が開催されたこと。
14時からのSession 2は、Chaophraya Ballroom, Room Bを会場に、その第1弾、Mini-Symposia, Sponsored by WHO/UNAIDS/UNDP/UN Women: 「Trans People in Asia and the Pacific: Cultural, legal and social environments」(Organizer : Sam Winter, PhD.)。
このシンポジウムは2部構成で、前半は持ち時間10分で5人がプレゼンテーション、後半は6人によるパネル・ディスカッション。
司会は、Asia-Pacific Transgender Network の Natt Kraipetさん(Tailand)。
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まず、前半のプレゼン5本。
(1)Joleen Mataele(Tonga)
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トンガ王国は、南太平洋のフィジーの東、ナウルの西に位置する。
トンガと言えば、先々代の国王トゥボウ4世が大の親日家で、トンガの若者を相撲界に送り込んできたこと(1974年来日、1976年廃業)を、私たちの世代以上だと覚えている人も多いと思う。
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伝統的なトンガの社会ではトランスジェンダーが社会と調和的に存在してきたこと。
トランスジェンダーへの差別が強まったのは、HIV感染の広がり以降(1980年代後半?)のこと。
(同性愛や異性装を禁じる)「聖書の規範」を安易に取り入れてはいけないこと。
トンガのトランスジェンダーの活動を知ることができたのは、今回の大きな収穫だった。
南太平洋(ポリネシア)のトランスジェンダーは、タヒチのマフ(Mahu=女写し)が有名だが(ハワイ諸島にもかってはマフがいた)、トンガにも同様のトランスジェンダー文化が確認でき、その広がりがポリネシア全域に及ぶ可能性が大きくなった。
伝統的なトランスジェンダー・カルチャーが西欧近代文明(「聖書の規範」や近代精神医学)の流入により否定され、社会と調和して生きていたトランスジェンダーが抑圧され、差別視されていく過程は、伝統的なトランスジェンダー・カルチャーを持っていたアジア・太平洋諸国では皆よく似ている。
ただ、そのタイミングに遅速があるだけで構造的にはほぼ同じである。
日本は1870年代にそれが始まり、トンガは1980年代に始まったというだけのこと。

(2)Junko Mitsuhashi(Japan)
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大河りりぃさんによると、1枚目のスライドがスクリーンに映し出された瞬間、「おお~」という声が会場から上がったらしい。
「掴みはOK」だったのだが・・・。
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「日本最初のSRSは1951年で、クリスチーナ・ジョルゲンセンの手術とほぼ同じ時期」と言ったのに、ほとんど反応がなかった。
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事前にきつく言われていた「時間厳守」ばかりが気になってしまい、私としてはいたって不出来なプレゼン。
せっかくこうした場を設けていただき、通訳をしてくださった東優子さんにたいへん申し訳なかった。
まあ、こうして観客席の後方からの写真を見ると、それなりに聞いてはもらえたのかもしれないが。
詳しい報告内容は下記をご覧ください。
http://junko-mitsuhashi.blog.so-net.ne.jp/2014-02-20-3

(3)Prempreda Pamoj Na Ayutthaya(Thailand)
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18世紀には、Kathoeiは「不毛」とか、植物の「種なし」の意味だった。
neither male nor female(男でもあり女でもある)の意味は19世紀以降。
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Lakhon nai is theatre of the woman of the paleace
(Lakhon nai という王宮の女性たちの劇団 1900年頃)
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Lakorn_Nok=Assumed theatre of the men out of the palace,at noble houses
(貴族の家で、王宮の外の男性による専属劇団)
高貴な人たちに奉仕する演劇が男女別になっていたことから、女性の劇団では男役が、男性の劇団では女役が必要になり、そこにKathoeiが関係する構図らしい。
演劇における男女の分離がトランスジェンダーと関連するのは、日本の歌舞伎の女形と構造的に似ている。
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↑ タイ舞踊。報告者自身らしく、照れている(↓)。
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intersex 状態ということで、性別の変更を認められた人。
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現在、「バンコク封鎖」をしている反政府勢力(民主派)とも連携。

(4)Manisha Dhakal(Nepal)
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ヒンドゥー教には、両性具有の神が多い。
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maruni という女性の衣服を身に着ける伝統的な男性ダンサーがいる。
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現代では、モデル、ダンサー、メイキャップアーティストなどいろいろな職業に進出している。
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一方、田舎では鞭打ち刑にされることも・・・。
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ネパールでは10月が祭月で故郷に帰る人が多いが、トランスジェンダーは保守的な田舎には帰りにくい。
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ネパールのトランスジェンダーの状況がよくわかり、大きな収穫だった。
困難な状況の中で、活動している方に敬服。

(5)Laxmi Narayan Tripati(India)
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スライド無しでの大演説。
その雄弁さに感服。
日本では、たとえ政治家でもこれだけの雄弁術を駆使できる人はいないだろう。
ただし、持ち時間を越え、しかも司会の制止を無視するのはいかがなものかと思う。

後半は6人によるパネル・ディスカッション。
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右奥から順に、
Magdalena Robinson(Philippines)
Emma Hoo(China)
Angela Ienes(Indonesia)
Khartini Slamah(Malaysia)
Jack Byrne(New Zealand)
Kasper Wan(Hong Kong)
1人2分間のショート・スピーチ。
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話しているのは、フィリピンのMagdalena Robinsonさんだが3人の脚に注目。
3人とも脚線美という話ではなく、そろって脚を組んでいること。
膝丈より短いスカートで低い椅子、しかも遮蔽板付きのテーブル無しだと、脚を組むしか防御手段がない。
ちょっと設営が無神経だと思う。
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インドネシアのAngela Ienesさんの話の中にチャラバイ(Calabai=南スラウェシのMtF) チャラライ(Calalai=南スラウェシのFtM)が出てきたが、インドネシアのような多民族・多宗教の国だと、地域によってだいぶ話が違ってくる。
ジャワ島など主流派のイスラム教社会と、バリ島のようなヒンドゥー教社会、南スラウェシのような土着的な宗教が強く残る少数民族社会では、トランスジェンダーの社会的状況はかなり異なる。
そこらへん詳しく聞きたかったが残念。
ここまでの3人は、持ち時間をちゃんと守ったが、4人目のマレーシアのKhartini Slamahさんが大演説。
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負けじと、5人目のニュージーランドのJack Byrneさんも大演説。
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6人目の香港のKasper Wanさんは自制していたが・・・。
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なぜか前半で大演説したインドのLaxmi Narayan Tripatiさんが出て来てしゃべりはじめる。
国際会議では発言時間は奪い合い、押しの強い国が発言枠を確保するということらしいが、日本人の感覚では司会者を無視した無法状態に近い。
結局、最初の3人は、2分間ずつしか発言の機会が与えられなかった。
国際的な場だからこそ、各国の代表に平等に発言時間が与えられるべきだと思うが、そういう理性的なことを考えるから、日本は国際会議で発言力がないのだろう。
15時30分、終了。
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休憩時間のロビー。WAPTHはWorld Association だが、実際には欧米の白人中心の組織であることがうかがえる。
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↑ ロビーで声をかけてくださった方(WHOのPengfei Zhao博士)。
「すばらしいプレゼンテーションでした」と言ってくださった。
お世辞でもうれしい(脱力)。

【おまけ】
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隣席で動画撮影するインドのお姐さん。
三つ編みにしてなお、お尻に届く髪の長さに驚いて、後姿を撮らせてもらった。
これだけの長さ、おそらく子供の頃から切っていないと思う。
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コメント 2

堀口貞夫

2月15日からの学会とは知らず、2月28日出発とばかり思ってました。
トンガやハワイ、ネパールなどいろいろな情報有り難うございました。ネパールは男社会で、母子保健の会議でも女性は出てこないというのが2000年頃の話でした。
三橋さんのプレゼンは明日読ませていただきます。
by 堀口貞夫 (2014-03-02 00:32) 

三橋順子

トンガとネパールの報告は、日本では今までほとんど知られていないことだったので、貴重でした。
資料になるよう写したスライドは全部、貼り込んであります。
単純化して言えば、社会の男性優位度が大きくなるほど、トランスジェンダーの置かれている状況は悪くなりますね。
by 三橋順子 (2014-03-02 21:28) 

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