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『朝日新聞』教育欄「いま子どもたちは 男装/女装」(第1回) [現代の性(いま子どもたちは 男装/女装)]

7月24日(水)
今日から『朝日新聞』朝刊の教育欄で「いま子どもたちは 男装/女装」と題する連載が始まりました。
第1回は「10代女子『男装ってカッコいい』」と題して、紙面の半分を使った大きな記事です。
10代の「男装女子」「女装男子(男の娘)」の流行現象を教育、文化の視点から取り上げた記事で、3週間、12回ほどの予定だそうです。
従来、「女装男子(男の娘)」を取り上げた新聞記事はありましたが、「男装女子」に注目した記事は珍しく、その点でも画期的な記事です。
私の解説(かなり長文)も載っていますので、ぜひ、ご覧になってください。
http://digital.asahi.com/articles/TKY201307230438.html?ref=comkiji_txt_end_kjid_TKY201307230438
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(いま子どもたちは)男装/女装:1
10代女子「男装ってカッコいい」 声援送り自らも
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10代女子に人気の男装アイドルユニット「風男塾」の公演=13日、福岡市
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西内まりやさん(左)と、彼女の男装姿(右)を載せたセブンティーン12年10月号=集英社提供

スポットライトを浴びた美少年アイドルたちが踊り、歌う。客席を埋める10代の女の子たちが、悲鳴にも似た声援を送る。
よくあるライブ風景だ。ただ、ステージのアイドル8人は、いずれも男装した10~20代の女性だ。
13日、福岡市のライブハウスで、男装アイドルユニット「風男塾(ふだんじゅく)」の公演があった。2008年デビューの「彼ら」のファンは最近、中高生女子を中心に増えている。この日も観客の3分の2が女性で、地元の高校の制服姿の子もちらほら。
「カッコいいからいいんです! 男装とか気になりません!」。熊本県合志市から来た高1の草野日菜子さん(15)は、風男塾のメンバーに会え、興奮気味だ。「だって、同級生にも男装する人いるし!」
自ら男装して来た子もいた。地元の高3の津田千秋さん(17)もその一人。赤い短髪のウィッグの下に長い黒髪を隠している。ふだんから時々男装を楽しむという。風男塾を知る前から、男装には好印象をもっていた。男装した画像をツイッターに載せる女性をフォローし、「ふつうにカッコいいな」と思っていた。「カッコよければ、男装でも全然アリ」と話す。
男装は、10代にとっては一部のマニアのものでも、「イタい」ものでもないようだ。
10代向けのファッション誌「セブンティーン」(集英社)は、11年11月号で専属モデルの男装コンテストを企画。編集部の渡辺賢介さんは「予想以上に好評だった」という。読者投票で1位になった西内まりやさん(19)はその後、テレビのバラエティー番組にも男装で出演した。渡辺さんは「今の10代にはオタクが一般化し、コスプレに抵抗がない。男装も同じような遊び感覚ですんなり受け入れているようだ」と話す。
同じようなコスプレ感覚で、韓国の男性アイドルをまねた男装女子も出現している。
「男装写メ」もブームだ。男に見えるように髪形や顔の角度を工夫して携帯電話で写真を撮り、友だちと見せ合う。
7~8年前に登場した「男装喫茶」でも10代の客が増えているという。男装した店員を男性に見立て、「男女の会話」を楽しむ店だ。東京・池袋の「80+1」は、客のほぼ半数が10代女性。店員10人はそれぞれ漫画やアニメの美少年をイメージした格好だ。
本物の男じゃダメなのか――。
10代女子たちは「リアルな男はヒゲとか汗とか、汚いもん」「男装は女だから、女が喜ぶ言動をよく知ってる」。
漫画やアニメの美少年に思いを寄せてきた少女は以前からいた。男装の美少年は、いわば「実写化」。少女たちの妄想がつくり出した「理想の男」だ。ときに妄想と現実の境目があいまいになりがちな、10代ならではのブームかもしれない。
男装する女子、女装する男に迫ってみた。(原田朱美)

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■「男の娘」、最近は10代に

女装する男子も顕在化している。「男の娘」と書いて「おとこのこ」と読む女装男子たちが話題になったのは2008年ごろ。20代が中心だが、最近は10代にも広がっている。
「男の娘」の定義ははっきりしないが、「見た目は女性だけれど、中身は男性という美少年」に使われることが多い。「女装子(じょそこ)」「化粧男子」と呼ぶ場合もある。同性愛指向でもない、性同一性障害でもない存在なので、社会的に注目を浴びた。ただ、「男の娘」にも、いろんな性的指向の男性がいる。
源流のひとつは、アニメや漫画。「見た目は女性の美少年」というキャラクターに憧れた男性たちの中で、コスプレ感覚で、キャラに似せた女装をする人が出てきた。
最近では、女装するノウハウを紹介する雑誌や本も多数出版されている。

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■この世代ならではの文化 三橋順子・明治大学非常勤講師(性社会史)

ここ数年、男装女子の顕在化が著しい。日本では伝統的に線が細い優男が美男子とされてきたので、女性が美男子を表現してもあまり無理がない。性差の接近が男装を可能にしている。
明治時代に欧米思想を輸入した際、筋肉やヒゲなど過度に男性性を強調した姿が美男子だという考えを国が世間に植え付けようとしたことがあるが、庶民の間では伝統的な「美男子=優男」が残り続けた。アニメや漫画などの「美男子」にもその指向が受け継がれたのだろう。 (この文節のみ、紙面では割愛)
男装の背景には、オタク文化の影響がある。漫画の登場人物や有名芸能人になりきって会話を楽しむ「なりきり」という遊びがネット上にあり、女子が男性キャラを演じることも多い。その延長で現実世界でも男装するという流れがある。
宝塚歌劇団の男役が人気を集めるなど、男装女子は、女装男子よりも社会的にも受け入れられやすい。
女装男子は、男装女子より先に「男の娘」などが流行した。最近は10代に低年齢化していると感じる。
以前は社会での女性の地位が今よりも低かったため、女装は「男なのに女なんかに落ちる」という社会的降下を意味した。だが今の男子にとっては、女性が「明るくて楽しそう」という存在に見え、女装はその仲間になりたいというポジティブな行為になっている。
男装より女装の方が技術的に難しいが、ネットでさまざまな情報を得やすくなり、ハードルが下がった。
子どもたちの男装・女装を、大人たちは必ずしも憂う必要はないと思う。漫画やアニメを現実世界でまねするという、この世代ならではの文化のひとつだ。
http://digital.asahi.com/articles/TKY201307230438.html?ref=comkiji_txt_end_kjid_TKY201307230438
(記事が大きいので3分割しました)
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(以下、デジタル版だけに掲載)
男装アイドル「試行錯誤」 プロデュースするはなわさん
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男装アイドルユニット「風男塾」をプロデュースする芸人はなわさん

【原田朱美】男装アイドルユニット「風男塾」がなぜ、10代女子に受けるのか。メンバーをまねして男装する背景に何があるのか。風男塾をプロデュースする芸人、はなわさんに聞いた。

10代女子「男装ってカッコいい」

――男装アイドルのプロデュースを思いついたきっかけは?

風男塾のメンバーはもともと、女子アイドル「中野風女シスターズ」というユニットをやっていました。あるとき、ライブの企画の一つとして、メンバーが男装をして学園モノのコントをしたら、観客の反応がよかったんです。「これは何かある」と感じ、同じメンバーで「風男塾」をデビューさせました。ライブをする度に女子中高生が増えていくのは僕も不思議です。

――男装で、どんな世界観をつくろうとしているのですか。

まだまだ何が当たるのか分からない。試行錯誤中ですよ。でもやっぱり、よく言われているように「2・5次元」です。アニメから飛び出たような、でもどこにでもいそうな美少年。メンバーたちは女の子たちの理想の男性像になりきっています。

――その理想の男性とリアルな男性はどう違うのでしょうか。

本当の男って、10代の女子にはちょっと怖いんですよ。何を考えているのか分からないし、自分のことをどう思ってくれているのか分からない。その点、風男塾メンバーは「好きだよ」とか「つきあってくれ」とかすごいことを何でも言えますから。メンバーもファンも、お互いに虚像だと分かっているからこそ、でしょうね。

――メンバーをまねする男装女子が増えているようです。

そうなんですよ。風男塾のメンバーオーディションにも男装女子が来ます。そういう子って、「女の子にモテたい!」って言うんですよ。風男塾メンバーもそう言うし。不思議な感覚です。男女の境界線が薄くなってきているからかもしれません。

――男装って「イタい」ものだと思われることが多かったのでは……。

まだまだそう思われていますよ。一部のマニアというかサブカルチャーのもの、という見方は強いです。そこを破りたい。男の子ファッションの流行もあるし、男装ブームが来てくれないかなあ。今後の風男塾のプロデュースについても、女子にまねしてもらうという点を意識していきたいですね。

――来年100周年の伝統を持つ宝塚歌劇団の男装も参考にしますか。

宝塚は歴史もあって、世界観が完璧に構築されていますよね。男装アイドルはもっとゆるくしたい。あえて女の子の要素を残そうと思ってます。メンバー選びも、女の子としてかわいいことが前提。オーディションは男装じゃなくて女性の姿のままでやっています。
http://digital.asahi.com/articles/TKY201307230448.html?ref=comkiji_txt_end_s_kjid_TKY201307230448

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コメント 2

カナッペ

>以前は社会での女性の地位が今よりも低かったため、女装は「男なのに女なんかに落ちる」という社会的降下を意味した
おっしゃる通りだと思います。
そして、そのことが女装ということの、一つの大きな要因であることは否定できなのだと思います。

そう考えると、女性の社会的な地位が上がれば、女装の社会的なハードルは下がる、と同時に男装に対する社会的なハードルも上がるのでしょう。。。。

というのはあくまでも理論上のことで、女性にも少しは異性装の困難さを味わってもらいたい、個人的な願望です(笑)
by カナッペ (2013-07-24 18:56) 

三橋順子

カナッペさん、いらっしゃいま~せ。
今までの社会認識では、女性がどれだけ男っぽくしても、幅の広い女性のファッションスタイルから出ることができず、「マニッシュな女性」の範囲でとらえられてしまいました。
そういう意味では「男装の困難」という現象がありました。
ところが、現代の若い人たちの感覚は、「マニッシュな女性」を「フェミニンな男性」に読み替える柔軟性があるように思います。
言葉を換えるならば「マニッシュな女性」と「フェミニンな男性」の間(あわい)に究極的な双性美を見出しているような気がします。
そして、双性美への接近のための手法としては、男性の女装よりも、女性の男装の方が技術的に楽であるということです。

by 三橋順子 (2013-07-26 01:51) 

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