SSブログ

アルジェリアと「カスバの女」 [日常(思い出)]

1月18日(金)
アルジェリア東部の天然ガス関連施設で起こったイスラム過激派の武装勢力による襲撃事件で、人質にされた日本人17人(「日揮」の社員)の安否がいまだに確認できない。
(19日0時段階で、7人無事、10人安否不明)。
なんとか全員生存・救出されて欲しいが、アルジェリア政府軍の鎮圧も過激なので楽観できない状況。

ところで、この事件についてのネット世界の反応で意外だったのは、アルジェリアという国の場所をイメージできない人がけっこういること。

私のような世代は、アルジェリアの名前を名曲「カスバの女」の「ここは地の果てアルジェリヤ」で、子供時代(1960年代)に覚えた。

「カスバの女」は、作詞:大高ひさお、作曲:久我山明で、1955年(昭和30)の作品。 
最初に唄ったのは大蔵省に勤務しながらクラッシック音楽を学んだ女性歌手エト邦枝さん(1916~87年)。
しかし、あまりヒットせず、広く知られるようになったのは1967年(昭和42)に緑川アコ(1947年~)がカバーしてから。
以後、沢たまき、青江三奈、ちあきなおみらなど、ハスキー(セクシー)ボイスの女性歌手が唄っている。
その背景には、1960年代のベトナム戦争の激化と、反戦運動の高まりがあったと思われる。
12歳の私が覚えたのも、緑川アコのヴァージョン。
23014548.jpg
(歌詞)
涙じゃないのよ浮気な雨に ちょっぴりこの頬濡らしただけさ
ここは地の果てアルジェリヤ どうせカスバの夜に咲く
酒場の女のうす情け

歌ってあげましょわたしでよけりゃ セーヌのたそがれ瞼の都
花はマロニエシャンゼリゼ 赤い風車の踊り子の
いまさらかえらぬ身の上を

貴方もわたしも買われた命 恋してみたとて一夜の火花
明日はチェニスかモロッコか 泣いて手をふるうしろ影
外人部隊の白い服

歌の背景は「アルジェリア独立戦争」(1954~62年)。
フランスからの独立を求める「アルジェリアの民族解放戦線(FNL)」が、首都アルジェの旧市街カスバなどを拠点に激しいゲリラ闘争を行った。
それに対して、植民地の権益に固執するフランスは「外人部隊」(傭兵部隊)を送りこみ、なんとか独立闘争を鎮圧しようとした。

歌詞から判るように「カスバの女」は、花のパリからアルジェのカスバに流れて来たフランス人女性(元、シャンゼリゼ界隈の踊り子)と「外人部隊」兵士(男)の悲恋を唄ったもの。
華やかだった若い時代のパリでの暮らしを懐かしみながら、今また結ばれぬ傭兵との恋に泣く落魄の身をなげく女の歌。

かって(1995~99年)の私のような盛りを過ぎたホステスが暗いレトロな酒場で唄うと雰囲気ぴったりなので、お客さんに受ける。
よく年配のお客さんから「順子、『カスバの女』唄ってくれ」とリクエストされた。

ちなみに、アフリカ大陸北岸(地中海沿岸)には、東からエジプト、リビア、チュニジア、アルジェリア、モロッコが並んでいる。
アルジェリアは、その中で面積最大の国(スーダンが分割したのでアフリカ最大、世界でも第10位)。
南部は広大なサハラ砂漠で、モーリタニア、マリ、ニジェールなどのサハラ諸国と接している。
map.gif
「カスバの女」の歌詞には、ちゃんと「明日はチェニス(正しくはチュニス)かモロッコ」と隣国の名前も出て来るので、地理の勉強になる。
アルジェリア、チュニス(チュニジアの首都)、モロッコの場所を地図帳で確認した子供時代の私は「ねえ、アルジェリアが『地の果て』だったら、その先のモロッコはなんなの?」と母親に質問したことがある。
確か母親は「地の果てがずっと続いているのよ」とわかったようなわからないような返事をしたように記憶する。

チュニジア、アルジェリア、モロッコなど北西アフリカの国を「マグレブ」(Maghreb)諸国と呼ぶ。
アラビア語で「日が没すること」の意味。
いつか、マグレブを旅行して大西洋に沈む夕日を見てみたい。

nice!(0)  コメント(3)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 3

京子

私も「カスバの女」を知っている年代です。
この事件を知った時に頭に浮かびましたが、
歌の内容と同じような環境が今も続いているの
ですね。
あるいはもっとひどいことになっているかも?
犠牲の報道がされています。
犠牲になった方々に哀悼の意を表します。
by 京子 (2013-01-18 21:29) 

三橋順子

京子さん、いらっしゃいま~せ。

私より先輩の方なら「カスバの女」はリアルタイムで聴いてらっしゃるはずです。
アルジェリアの現状は、遡れば植民地時代からの傷(社会矛盾)がずっと治っていないようなもので、安定した国造りはなかなか難しいのかもしれません。
犠牲者が少ないことを願っています。

by 三橋順子 (2013-01-19 01:31) 

今井

「カスバの女」をリアルタイムでは知らない世代です。
古本で買ったみなもと太郎さんの漫画「ホモホモ7」の中に「カスバの女」の歌詞がありました。
YouTubeで覚え、この間職場の施設で歌ったら、ご存じの方がいるようで、小声で合わせて歌うのが聞こえました。

平成最後の年、リビア国内の対立激化のニュースを聞き、「カスバの女」の歌詞を検索してここに来ました。
事実関係としては「シェルブールの雨傘」が近いのですね。
私は…何となくモノクロの「モロッコ」、ラストのマレーネ・ディートリヒのイメージがあったのですが。
by 今井 (2019-04-06 21:50) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0