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『週刊特集実話NEWS』『週刊特報』の書誌と記事 [性社会史研究(性風俗雑誌)]

1月11日(金)
インターネット古書店「太陽野郎」さんから、1960年代初頭の「実話系雑誌」を3冊入手した。

『週刊特集実話NEWS』は、日本文華社から刊行された「実話系雑誌」。
今回入手したのは10号(1961年5月16日号)と32号(1961年12月28日号)。
この他、4号 (1961年2月23日号)、6号(1961年3月23日号)などの在庫があった。
こう並べてみると、すぐに気付くことなのだが、書名通りの「週刊」だとすると、号数が合わない。
4号が2月23日号で、6号が3月23日号だから、その間に1号しか出ていない。
換言すれば月2号ペース、つまり少なくとも発行当初は「隔週刊」だったと思われる。
「隔週刊」だとすると、6号(3月23日号)と10号(5月16日号)の間隔も説明がつく。

ところが、10号(5月16日号)と32号(12月28日号)の間隔は「隔週刊」だと合わない。
そこで、さらに在庫を見ると、13号(6月29日号)、26号(10月5日号)、29号(11月16日号)、37号(1962年3月8日号)があった。
26号と29号、29号と32号、32号と37号の間隔は「隔週刊」だとすると説明がつく。
しかし、13号(6月29日号)と26号(10月5日号)の間は「隔週刊」だとすると6号分なのに13号分も離れていて、まったく合わない。
この間に一時的に「週刊」になったのか? あるいは臨時増刊がたくさん(7号分)刊行されたのか?
もう少しデータがあったらいいのだが・・・。

ところで、『週刊特集実話NEWS』の創刊時期だが、昭和35年(1960)11月18日「第三種郵便認可」を取っているので、それ以降であることは確定的だ。
4号が1961年2月23日号なので、「隔週刊」を想定して遡ると、創刊号は1961年1月14日号になる。
『週刊特集実話NEWS』の創刊は、1961年1月と推定してよさそうだ。

(1)『週刊特集実話NEWS』10号(1961年5月16日号)
週刊特集実話NEWS10号(1961年5月16日号).JPG
注目は「怪しい魅力!美少年クラブの歪んだセックス」という記事。
サブ見出しは「可愛がられるコール・ボーイの生態と美少年を買う女達」。」
リードは「俺たちの時代は過ぎた、とタフガイ達を歎かせる美少年クラブやゲイ・バーが秘かなブームの波に乗っているが、歪んだ性倒錯の世界に生きる美少年達の金儲けと、その生態を探る異色読物」
第一次「ゲイブーム」だった1950年代後半のゲイ世界のルポはそれなりにあるが、ブームが過ぎた1960年代初頭のものは珍しいと思う。
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もうひとつ「現地ルポ 赤線偽装地帯を探る 博多名物観光売春」という記事も売春防止法完全施行(1958年3月)から3年後の実態をうかがう上で興味深い。

(2)『週刊特集実話NEWS』32号(1961年12月28日号)
週刊特集実話NEWS32号(1961年12月28日号).JPG
収穫は巻頭グラビアの「話題スナップ おとこからおんなになった性転換の妖艶ストリッパー」。
このグラビアは以前からコピーを所蔵していて、それを使ったコラムも書いているが、コピーの状態があまり良くなかった。
今回、オリジナルを入手できてうれしい。
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グラビア頁とは別に「舞台に賭ける性転換のストリッパー」という記事も載っている。
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これらの記事でメインに扱われている吉本一二三(ひふみ)は、徳島県小松島市の生まれで、1950年代に美貌の女装男娼・女装芸者として知られた人。
1959年頃、東京でに造膣手術を受け、1961年初冬に東京浅草の「ロック座」で性転換ストリップショーで大当たりをとった。
私の研究では、男性から女性への性転換手術として、吉本一二三の事例は日本でおそらく5番目。
【参照】
三橋順子「日本女装昔話 (7)最初の性転換ヌードダンサー - 吉本一二三と高橋京子 -」
http://www4.wisnet.ne.jp/~junko/junkoworld3_3_07.htm
三橋順子「性転換の社会史(1) -日本における「性転換」概念の形成とその実態、1950~60年代を中心に-」
(矢島正見編著『戦後日本女装・同性愛研究』 中央大学出版部 2006年3月)

このグラビアと記事は、後日、詳しく紹介しようと思っている。
(グラビア)http://zoku-tasogare-sei.blog.so-net.ne.jp/2013-01-12
(記事)http://zoku-tasogare-sei.blog.so-net.ne.jp/2013-01-23

(3)『週刊特報臨時増刊』No3(1962年4月)
『週刊特報』は新樹書房から刊行された「実話系雑誌」。
インターネット古書店「太陽野郎」の販売リストに『週刊特報』昭和36年2月22日創刊号があるので、1961年2月の創刊と確定できる。
3号が1961年3月22日号、4号が4月5日号)なので、『週刊特集実話NEWS』と同様に「週刊」と称しながら「隔週刊」だったと思われる。
週刊特報臨時増刊No3(1962年4月).JPG
今回入手したのは『週刊特報臨時増刊』No3(1962年4月12日号)。
29号が1962年3月22日号、31号が4月19日号であることが確認できるので、30号が4月5日号と推定され、「臨時増刊」3号は30号と31号の間に刊行されたと思われる。
もしかすると30号記念だったのかも。

注目は「ドヤ街の男娼部屋に監禁された男の悪夢の体験」という記事。
繊維会社勤務の34歳のサラリーマン(妻子有り)が、新橋田村町あたりで出会った「女」の部屋(深川・高橋のドヤ街)に連れ込まれる。
夜が明けて「女」が女装男娼であることに気づくが、「女」の深情けにほだされて、1週間も「居続け」する話。
記事名の「監禁」というのとは全然違い、情が深い「女」に大事にされて、「悪夢」どころかけっこう良い思いをして帰ってくるという話。
1950年代前半に新橋の田村町(現・西新橋交差点)あたり女装男娼が出没していたことは別の資料で知っていたが、深川の高橋(たかばし)に女装男娼ばかりが集まり住むアパート(文中では「埼玉屋旅館」)があったことは知らなかった。
高橋は大正期からスラム化した地域で、戦後も簡易宿泊街(ドヤ街)が形成された貧困地域。
現在は江東区高橋で、東京メトロ白川清澄駅から北へ小名木川に架かる高橋を渡った東側の地域。
ドヤはほとんど姿を消し、数軒のビジネスホテルに名残を残している。

もうひとつ、男性同性愛関係で「ゲイ・ボーイに金五十万円を脅し取られた黒い情事―男が男に狂ったあげく―」という記事が載っている。
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